PRP療法はすべて第3種ではありません|導入前に確認すべき分類と手続き

林医療福祉行政書士事務所

PRP療法は、整形外科、美容皮膚科、歯科、形成外科など、さまざまな診療科で導入が検討されることの多い再生医療等です。

PRPとは、多血小板血漿のことで、患者自身の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む血漿成分を調製し、患部に投与する治療です。

自己血を用いるため、幹細胞治療などと比べると導入しやすい印象を持たれることがあります。

しかし、PRP療法であっても、すべてが第3種再生医療等になるわけではありません。

投与部位、使用目的、相同利用に該当するかどうかによって、第2種再生医療等となる場合があります。

本記事では、医療機関がPRP療法を導入する前に確認すべき分類と手続き上の注意点を解説します。


1. 「PRPだから第3種」とは判断できない

PRP療法は、自己血由来の細胞加工物を用いる治療であり、一般的には比較的リスクが低い再生医療等として扱われることが多い分野です。

しかし、再生医療等安全性確保法上の分類は、「PRPかどうか」だけで決まるものではありません。

重要なのは、次のような要素です。

・どこに投与するのか
・何を目的として投与するのか
・相同利用に該当するのか
・承認または認証された医療機器をどの範囲で使用するのか
・治療内容が既存の分類に適合しているのか

厚生労働省は、末梢血を遠心分離し、培養せずに用いる医療技術について、皮膚や口腔内への投与は相同利用に該当する一方、関節腔内など血流の乏しい組織への投与は相同利用に該当しないと説明しています。 

つまり、同じPRPであっても、皮膚再生目的で用いる場合と、膝関節内に投与する場合では、分類判断が異なります。

「他院で第3種として実施しているから」
「PRPはよく行われている治療だから」
「自己血なので安全性が高いから」

このような理由だけで、第3種と判断することはできません。


2. 皮膚・口腔内へのPRPと、関節内PRPは分けて考える

PRP療法で特に誤解が生じやすいのが、皮膚や口腔内への投与と、関節内投与の違いです。

皮膚や口腔内にPRPを投与する場合は、血小板の機能や創傷治癒への関与という観点から、相同利用に該当すると整理されます。

一方で、関節腔内など血流の乏しい組織にPRPを投与する場合は、厚生労働省の説明上、相同利用には該当しないとされています。 

そのため、たとえば次のような整理が必要になります。

・美容皮膚科での肌再生目的のPRP
・歯科インプラントや口腔外科領域でのPRP
・変形性膝関節症に対するPRP関節内投与
・スポーツ障害に対するPRP注射
・婦人科領域、泌尿器科領域などでのPRP投与

これらは、いずれも「PRP」という点では共通しています。

しかし、投与部位や目的が異なれば、リスク分類、委員会の種類、提供計画の記載内容、科学的妥当性の説明方法も変わります。

PRP療法を導入する場合は、まず「PRPを使うか」ではなく、「どの疾患・症状に対して、どの部位に、どの目的で投与するのか」を明確にする必要があります。


3. 第2種と第3種では、委員会も手続きの重さも変わる

再生医療等は、リスクに応じて第1種、第2種、第3種に分類されています。

一般の医療機関がPRP療法を導入する場合に多いのは、第2種または第3種です。

第2種再生医療等に該当する場合は、特定認定再生医療等委員会の審査を受ける必要があります。

一方、第3種再生医療等に該当する場合は、認定再生医療等委員会の審査を受けることになります。

この違いは、単なる名称の違いではありません。

審査を依頼する委員会、審査の観点、必要な資料、費用、スケジュールに影響します。

特に第2種に該当する場合は、安全性や科学的妥当性について、より慎重な説明が求められることが多くなります。

PRP関節内投与などでは、対象疾患、重症度、投与回数、投与間隔、評価指標、投与後のフォロー方法などを具体的に整理する必要があります。

分類判断を誤ったまま準備を進めてしまうと、後から委員会の選定や資料構成をやり直すことになり、導入スケジュールが大きく遅れる可能性があります。


4. 院内でPRPを作る場合は、製造施設の手続きも確認する

PRP療法では、採血後に院内で遠心分離を行い、PRPを調製するケースが一般的です。

この場合、再生医療等提供計画だけでなく、特定細胞加工物の製造に関する手続きも確認する必要があります。

地方厚生局のFAQでは、手術室でPRPを製造し、歯科用インプラントに併用して患者に投与する場合について、再生医療等を提供する前に、特定細胞加工物製造事業者の手続きおよび再生医療等提供計画の提出が必要であると説明されています。 

医療機関内の施設で特定細胞加工物の製造を行う場合には、所定の製造届などの手続きが必要になります。

そのため、PRP療法を導入する際には、次の点を確認する必要があります。

・PRPを院内で調製するのか
・外部CPCに委託するのか
・使用する遠心分離機やキットは何か
・調製場所はどこか
・清潔管理の手順は整っているか
・製造記録をどのように残すか
・品質確認をどこまで行うか
・患者ごとのトレーサビリティをどう確保するか

「採血して遠心分離するだけ」と考えてしまうと、製造管理や記録管理が不十分になりやすいため注意が必要です。


5. 説明同意文書では、費用・効果・限界を明確にする

PRP療法は、執筆時時点では自由診療として提供される治療です。

そのため、患者への説明では、治療内容だけでなく、費用、期待される効果、効果の限界、代替治療、リスク、健康被害が生じた場合の対応などを明確にする必要があります。

特に注意すべきなのは、効果を過度に強調しないことです。

PRP療法では、症状の改善が期待できる場合がある一方で、すべての患者に十分な効果が出るとは限りません。

たとえば、変形性膝関節症に対するPRP関節内投与では、重症度、年齢、関節の変形の程度、炎症の状態、生活習慣、リハビリの実施状況などによって、効果の現れ方が異なります。

説明同意文書では、次の内容を分かりやすく記載する必要があります。

・治療の目的
・治療方法
・投与するPRPの量
・投与回数と投与間隔
・期待される効果
・効果が保証されないこと
・起こり得る副作用や合併症
・他の治療方法との比較
・費用
・同意撤回の方法
・健康被害が生じた場合の対応
・認定再生医療等委員会に関する情報

説明同意文書は、単に委員会審査のために作るものではありません。

患者が治療を受けるかどうかを判断するための重要な資料です。

そのため、専門的な内容を含みつつも、患者が理解できる表現に整える必要があります。


6. PRP療法は、開始後の記録管理も重要

PRP療法は、提供計画を提出して治療を開始すれば終わりではありません。

開始後は、定期報告、疾病等報告、記録管理、変更管理が必要になります。

厚生労働省は、再生医療等提供計画を地方厚生局長等へ提出した日から起算して、1年ごとに、当該期間満了後90日以内に定期報告を行う必要があると示しています。定期報告では、提供を受けた者の数、疾病等の発生状況、安全性および科学的妥当性についての評価などが報告事項とされています。 

そのため、PRP療法を開始する段階で、次のような記録体制を整えておく必要があります。

・施術日
・対象疾患
・投与部位
・投与量
・投与回数
・使用したキットやロット情報
・有害事象の有無
・治療前後の評価指標
・患者フォローの実施状況
・同意書の保管状況

特に、関節内PRPの場合は、VAS、JOA、KOOS、可動域、患者満足度など、治療効果を評価するための指標をあらかじめ決めておくことが重要です。

定期報告の時期になってから評価項目を集めようとしても、必要な情報が残っていなければ、安全性や科学的妥当性の評価が十分にできません。

PRP療法は、導入時の手続きだけでなく、導入後に報告できる形で運用を設計することが重要です。


まとめ

PRP療法を導入する際には、「PRPだから第3種」と単純に判断することはできません。

確認すべきポイントは次のとおりです。

・投与部位と使用目的を明確にする
・相同利用に該当するか確認する
・第2種か第3種かを正しく判断する
・院内で調製する場合は製造施設の手続きを確認する
・説明同意文書で効果、限界、費用、リスクを明確にする
・開始後の定期報告や記録管理まで見据える

PRP療法は、比較的導入しやすい再生医療等として検討されることが多い一方で、分類判断や運用体制を誤ると、法令上の問題につながる可能性があります。

林医療福祉行政書士事務所では、PRP療法をはじめとする再生医療等提供計画の作成、委員会対応、製造届、説明同意文書の整備、定期報告まで、再生医療等に関する手続きをサポートしています。

PRP療法の導入をご検討中の医療機関様は、まずはお気軽にご相談ください。

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