再生医療等を始める前に、医療機関が必ず確認すべき5つのこと

林医療福祉行政書士事務所

PRP療法や脂肪由来幹細胞治療などの再生医療等を導入したいという医療機関は、年々増えています。

一方で、再生医療等は自由診療であっても、医療機関が自由に開始できる治療ではありません。

再生医療等安全性確保法では、再生医療等技術を第1種、第2種、第3種に分類し、それぞれに応じた手続を定めています。また、提供計画を提出せずに再生医療等を提供した場合は、再生医療等安全性確保法違反となることが明示されています。 

特に近年は、再生医療等を提供する医療機関の体制、CPCとの関係、疾病等報告、患者への説明、治療の主導権などが厳しく見られる傾向にあります。

実際に、令和8年4月21日に厚生労働省が公表した緊急命令では、疾病等報告や原因究明を行わないまま提供を継続していたこと、第三者が患者情報、対象疾患、投与細胞数、投与方法等を指定していたこと、医療機関が対象疾患や選択基準・除外基準への該当性を主体的に判断していなかったことなどが問題視されています。 

そこで本記事では、再生医療等を始める前に、医療機関が必ず確認すべき5つのポイントを解説します。


1. その治療が「再生医療等」に該当するか

最初に確認すべきことは、導入しようとしている治療が再生医療等安全性確保法の対象になるかどうかです。

再生医療等安全性確保法の対象となる再生医療等技術は、大きくいうと、人の身体の構造・機能の再建、修復、形成、または疾病の治療・予防を目的とする医療技術で、細胞加工物または核酸等を用いるものです。 

たとえば、以下のような治療は再生医療等に該当する可能性があります。

・PRPを用いた皮膚再生治療
・PRPを用いた関節内注射
・脂肪由来幹細胞を用いた関節治療
・脂肪由来幹細胞の点滴療法
・線維芽細胞を用いた皮膚再生治療
・免疫細胞療法

注意すべきなのは、「採血して戻すだけ」「自分の細胞だから問題ない」「美容目的だから医療というよりエステに近い」といった感覚では判断できないという点です。

再生医療等に該当する場合は、事前に再生医療等提供計画を作成し、認定再生医療等委員会または特定認定再生医療等委員会の審査を受けたうえで、厚生労働大臣または地方厚生局長に提出する必要があります。


2. 第2種か第3種かを正しく判断する

再生医療等は、リスクに応じて第1種、第2種、第3種に分類されます。

一般の医療機関で相談が多いのは、第2種と第3種です。

たとえば、PRPであっても、投与部位や目的によって第2種になる場合と第3種になる場合があります。厚生労働省の説明でも、末梢血を遠心分離して培養せずに用いる医療技術について、皮膚や口腔内への投与は相同利用に該当する一方、関節腔内など血流の乏しい組織への投与は相同利用に該当しないとされています。 

つまり、「PRPだから第3種」と単純に判断することはできません。

同じPRPでも、皮膚再生目的なのか、関節内投与なのか、歯科領域なのか、産婦人科領域なのかによって、分類や必要な審査が変わる可能性があります。

脂肪由来幹細胞についても同様です。

培養するのか、未培養なのか、局所投与なのか、静脈投与なのか、対象疾患は何かによって、計画の作り方、委員会の選定、必要な文献、医師の専門性に関する説明が変わります。

分類を誤ると、必要な委員会審査そのものが変わるため、導入準備の最初の段階で慎重に確認する必要があります。


3. 医療機関が治療を主体的に管理できる体制か

再生医療等は、CPC、紹介会社、コンサルティング会社、機器メーカーなど、医療機関以外の事業者が関与することも少なくありません。

しかし、再生医療等を提供する主体は、あくまで医療機関です。

外部事業者が関与している場合でも、医療機関は少なくとも次の事項を自ら判断できる体制を整える必要があります。

・対象疾患の判断
・選択基準、除外基準への該当性
・投与の必要性
・投与細胞数や投与量の妥当性
・患者への説明内容
・有害事象発生時の対応
・CPCから提供される情報の確認
・提供計画と実際の運用の整合性

令和8年4月21日に厚生労働省が公表した緊急命令では、第三者が患者情報、対象疾患、投与細胞数、投与方法等を指定し、医療機関が主体的に判断していなかったことが問題視されています。 

この点は、今後の再生医療等の運用において非常に重要です。

CPCや外部業者から提案を受けること自体が直ちに問題になるわけではありません。

問題は、医療機関が治療内容を理解せず、患者の適格性や投与内容を自ら判断せず、外部事業者の指示に従っているだけの状態になることです。

再生医療等を導入する場合は、書類上だけでなく、実際の運用においても「医療機関が主体的に判断している」と説明できる体制を整える必要があります。


4. 委員会審査を通過できるだけの科学的妥当性があるか

再生医療等提供計画は、書類の形式が整っていれば必ず通るものではありません。

認定再生医療等委員会は、科学的妥当性、安全性、生命倫理への配慮などの観点から審査を行います。厚生労働省は、研究以外の再生医療等提供計画を審査する場合、再生医療等を受ける者の利益として、有効性が安全性におけるリスクを上回ることが十分予測されることを確認し、意見を述べる必要があると示しています。 

そのため、次のような計画は審査で止まりやすくなります。

・対象疾患が広すぎる
・選択基準、除外基準が曖昧
・投与回数や投与間隔の根拠が不明確
・投与細胞数の根拠が不明確
・使用する細胞加工物の品質管理が不十分
・臨床文献と治療内容の対応関係が弱い
・説明同意文書のリスク説明が不足している

特に、幹細胞を用いた点滴療法や、美容・アンチエイジングを目的とする治療では、対象疾患や科学的根拠の示し方が重要になります。

「患者ニーズがある」「他院で実施されている」「CPCから提案された」というだけでは、科学的妥当性の説明としては不十分です。

導入前の段階で、どの疾患を対象にするのか、その疾患に対してどのような文献があるのか、投与方法や投与量をどう説明するのかを整理しておく必要があります。


5. 開始後の定期報告・疾病等報告・変更管理まで見据えているか

再生医療等は、提供計画を提出して終わりではありません。

治療開始後も、定期報告、疾病等報告、不適合報告、変更届、記録管理などの継続的な義務があります。

厚生労働省は、再生医療等提供計画を地方厚生局長等へ提出した日から起算して、1年ごとに、当該期間満了後90日以内に定期報告を行う必要があると示しています。また、定期報告では、提供を受けた者の数、疾病等の発生状況、安全性および科学的妥当性についての評価などが報告事項とされています。 

さらに、疾病等が発生した場合には、内容に応じて7日以内、15日以内、または定期報告時に報告する必要があります。特定細胞加工物等を用いた場合には、製造事業者にも速やかに通知しなければならないとされています。 

そのため、導入時点で次のような運用を決めておくことが重要です。

・施術件数の記録方法
・有害事象の確認方法
・患者フォローの時期
・評価指標の設定
・CPCとの情報共有方法
・定期報告に必要なデータの管理方法
・変更が生じた場合の確認フロー

特に、投与回数、投与量、対象疾患、医師、CPC、製造方法、品質管理方法などを変更する場合は、変更届や委員会審査が必要になる可能性があります。

再生医療等は、導入時の書類作成だけでなく、開始後の運用管理まで含めて設計することが重要です。


まとめ

再生医療等を始める前に、医療機関が確認すべきポイントは次の5つです。

・その治療が再生医療等に該当するか
・第2種か第3種かを正しく判断できているか
・医療機関が治療を主体的に管理できる体制か
・委員会審査を通過できるだけの科学的妥当性があるか
・開始後の定期報告、疾病等報告、変更管理まで見据えているか

再生医療等の導入では、制度の理解、医学的根拠、委員会対応、CPCとの連携、運用開始後の管理を一体で検討する必要があります。

林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成・提出、委員会対応、CPC選定、定期報告まで、再生医療等に関する手続きをサポートしています。

再生医療等の導入をご検討中の医療機関様は、まずはお気軽にご相談ください。

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