今回は「骨髄由来幹細胞を用いた脊髄損傷の治療」について紹介させていただきます。
この治療法は、患者本人の骨髄から製造した「骨髄由来(間葉系)幹細胞」を損傷した脊髄に注射して投与することにより、脊髄損傷の症状改善、運動機能回復等を図る治療法です。
培養した幹細胞を用いるため、再生医療等技術としての区分は第二種となります。
(1)骨髄由来幹細胞とは?
骨髄由来幹細胞とは、骨髄に含まれる幹細胞(自己増殖能と多分化能を併せ持つ細胞)です。
人間の成体の色々なところに様々な種類の幹細胞が存在しており、骨髄には血球等の元となる幹細胞である造血幹細胞と、骨や軟骨、神経など様々な種類の組織、細胞へと分化する能力を持つ間葉系幹細胞という2種類の幹細胞が含まれています。
この治療法で用いるのは間葉系幹細胞の方で、脂肪由来幹細胞と類似した性質を持つ細胞です。
骨髄由来間葉系幹細胞は、骨髄から細胞を採取する必要があり患者への負担が大きく、一度に取れる量が少ないという点では脂肪由来間葉系幹細胞に劣りますが、脂肪由来間葉系幹細胞よりも発見が古く、多くの研究実績が蓄積されていることから再生医療の研究、治療にも用いられています。
骨髄由来間葉系幹細胞には前述のとおり様々な種類の細胞に分化する能力があることに加えて、様々な成長因子や抗炎症因子を分泌する能力があることから、骨髄由来間葉系幹細胞の投与により組織の再生や炎症の抑制効果が得られます。
(2)脊髄損傷とは?
脊髄損傷とは、主に脊柱(背骨)に強い外力が加わることにより、脊柱内に走る脊髄が損傷することにより生じる病態であり、脳と四肢を繋ぐ中枢神経系の一部である脊髄が損傷することにより、感覚機能や運動機能に障害が生じます。
主に交通事故や高所からの落下、転倒などによって生じる症状であり、毎年5,000人以上が脊髄損傷を負っていると言われています。
中枢神経系の一部である脊髄は、一度損傷すると修復・再生する能力がほとんどないことから、従来の治療法では脊髄損傷から完全に回復させることは難しく、幹細胞等を用いて神経を再生させる再生医療が最も有望な治療法となっています。そのため、今回紹介する骨髄由来間葉系幹細胞を用いた治療法以外にも、様々な細胞を用いた再生医療法が研究されています。
(3)骨髄由来幹細胞を用いた脊髄損傷の治療
この治療法は、前述のとおり患者本人の骨髄から製造した「骨髄由来(間葉系)幹細胞」を損傷した脊髄に注射して投与することにより、脊髄損傷の症状改善、運動機能回復等を図る治療法です。
骨髄由来間葉系幹細胞を受傷部位に投与することにより、損傷した神経の修復・再生に働き、神経機能の回復等の効果が期待されます。
この治療法は国内外で複数の研究グループにより研究結果が報告されており、生理学的な解析による神経機能の回復や、運動試験による歩行能力等の運動機能の改善が示されています。
骨髄由来間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷の治療は、現時点では日本国内で実施している医療機関は少ないものの、有効な治療法に乏しい脊髄損傷の治療法として有望であり、今後実施する医療機関が増加していく可能性があると考えられます。
当事務所では「骨髄由来幹細胞を用いた脳血管障害の治療」の提供計画を作成し、受理された実績があります。
この治療法の提供を検討している方は、お気軽にご相談ください。