今回は「脂肪由来幹細胞を用いた不定愁訴の治療」について紹介させていただきます。
この治療法は、患者本人の皮下脂肪から製造した「脂肪由来幹細胞」を静脈点滴により投与することにより、不定愁訴の症状改善を図る治療法です。
培養した幹細胞を用いるため、再生医療等技術としての区分は第二種となります。
(1)脂肪由来幹細胞とは?
脂肪由来幹細胞とは、名前のとおり脂肪から採取される幹細胞(自己増殖能と多分化能を併せ持つ細胞)です。
人間の成体の色々なところに様々な種類の幹細胞が存在しており、脂肪由来幹細胞はその中でも「間葉系幹細胞」という種類の幹細胞に分類され、脂肪だけでなく骨や軟骨、神経など様々な種類の組織、細胞へと分化する能力を有しています。
同じく間葉系幹細胞に分類される細胞としては骨髄由来幹細胞があり、従来は再生医療への応用のための研究の中心は骨髄由来幹細胞でしたが、近年では脂肪由来幹細胞が注目されています。
その理由としては、骨髄由来幹細胞は骨髄から細胞を採取する必要があり患者への負担が大きく、一度に取れる量が少ないのに対して、脂肪由来幹細胞は皮下脂肪から採取できるため患者への負担が少なく、一度に取れる量が多いことが挙げられます。
脂肪由来幹細胞には前述のとおり様々な種類の細胞に分化する能力があることに加えて、様々な成長因子や抗炎症因子を分泌する能力があることから、脂肪由来幹細胞の投与により組織の再生や炎症の抑制効果が得られます。
また、脂肪由来幹細胞には、損傷や炎症を起こしている細胞、組織から発せられるシグナルを認識し、血管内を移動してその部位に集まる「ホーミング効果」と呼ばれる性質があります。
(2)不定愁訴とは?
不定愁訴とは、頭痛や疼痛、倦怠感など症状があるものの医学的に原因が特定できない状態のことを言い、原因が特定できないため有効な治療法を選択することも困難な症状です。
薬物療法や、精神的な要因にも左右されるためカウンセリングによっても改善が見られる可能性もありますが、確実に治療効果が得られる治療法はありません。
(3)脂肪由来幹細胞を用いた不定愁訴の治療
この治療法は、前述のとおり患者本人の皮下脂肪から製造した「脂肪由来幹細胞」を静脈への点滴により投与することにより、不定愁訴の症状改善を図る治療法です。
不定愁訴は、原因が特定できないため治療が難しい症状ですが、脂肪由来幹細胞が持つホーミング効果により、損傷したり炎症を起こしている原因部位に脂肪由来幹細胞が集まり、組織・細胞の再生や炎症抑制に働くことにより症状改善の効果が得られる可能性があります。
「脂肪由来幹細胞を用いた不定愁訴の治療」で用いる静脈への点滴は、局所への投与と比べてリスクが大きく、委員会での審査も通りにくい傾向にありますが、当事務所では委員会による審査に通り、厚生局にも受理された実績があります。
この治療法の提供を検討している方は、お気軽にご相談ください。