再生医療等安全性確保法の対象となる「再生医療等」に該当するか否かの判断基準の一つが、「細胞加工物」を用いているか否かです。特に、「加工」とは何を指すかが、「再生医療等」への該当性を検討する上で重要となります。
「加工」の定義について厚生労働省医政局研究開発振興課長通知(医政研発1031第1号)(いわゆる課長通知)では以下のように示されています。
「加工」とは、 細胞・組織の人為的な増殖・分化、細胞の株化、細胞の活性化等を目的とした薬剤処理、生物学的特性改変、非細胞成分との組み合わせ又は遺伝子工学的改変等を施すことをいうものとすること。 組織の分離、組織の細切、細胞の分離、特定細胞の単離(薬剤等による生物学的・化学的な処理により単離するものを除く。)、抗生物質による処理、洗浄、ガンマ線等による滅菌、冷凍、解凍等は「加工」とみなさないものとすること(ただし、本来の細胞と異なる構造・機能を発揮することを目的として細胞を使用するものについてはこの限りでない。)。
この定義により、臓器移植や組織移植は「加工」とみなされず、「再生医療等」に該当しないと判断されます。
課長通知による定義により、以下のような行為は「加工」に該当し、これらの処理を施された細胞、組織は細胞加工物となります。
- 培養
- 遺伝子導入
- 薬剤処理(抗生物質による処理は除く)
- 酵素処理による細胞の分離、単離 など
また、最後のかっこ書きにも注意が必要となります。例えば、自己多血小板血漿療法(PRP療法)では、末梢血を遠心分離にかけて血小板に富んだ画分を分離して培養等の処理は行わずに患者に投与するため、一見、「加工」に該当しないように思われますが、かっこ書きにある、本来の細胞と異なる機能を発揮することを目的として細胞を使用する治療法に該当します。その結果、「細胞加工物」に該当し、再生医療等安全性確保法の対象となります。
このように、一見「加工」に該当しないように見える方法でも、「加工」と判断される可能性がありますので、勝手に判断せず、管轄の地方厚生局に相談するなどして確認することが必要となります。