脂肪由来幹細胞を用いた重症下肢虚血の治療

今回は「脂肪由来幹細胞を用いた重症下肢虚血の治療」について紹介させていただきます。

この治療法は、患者本人の皮下脂肪から製造した「脂肪由来幹細胞」を下肢(足)の筋肉内に投与することにより、重症下肢虚血(糖尿病性潰瘍、バージャー病等)の症状改善を図る治療法です。

培養した幹細胞を用いるため、再生医療等技術としての区分は第二種となります。

(1)脂肪由来幹細胞とは?


脂肪由来幹細胞とは、名前のとおり脂肪から採取される幹細胞(自己増殖能と多分化能を併せ持つ細胞)です。

人間の成体の色々なところに様々な種類の幹細胞が存在しており、脂肪由来幹細胞はその中でも「間葉系幹細胞」という種類の幹細胞に分類され、脂肪だけでなく骨や軟骨、神経など様々な種類の組織、細胞へと分化する能力を有しています。

同じく間葉系幹細胞に分類される細胞としては骨髄由来幹細胞があり、従来は再生医療への応用のための研究の中心は骨髄由来幹細胞でしたが、近年では脂肪由来幹細胞が注目されています。

その理由としては、骨髄由来幹細胞は骨髄から細胞を採取する必要があり患者への負担が大きく、一度に取れる量が少ないのに対して、脂肪由来幹細胞は皮下脂肪から採取できるため患者への負担が少なく、一度に取れる量が多いことが挙げられます。

脂肪由来幹細胞には前述のとおり様々な種類の細胞に分化する能力があることに加えて、様々な成長因子や抗炎症因子を分泌する能力があることから、脂肪由来幹細胞の投与により組織の再生や炎症の抑制効果が得られます。

また、脂肪由来幹細胞にはVEGFやSDF-1などの血管の形成、新生に作用する因子を分泌する能力があることも報告されています。

(2)重症下肢虚血とは?

重症下肢虚血とは、末梢動脈疾患が重症した疾患です。動脈硬化などが原因となって血管が詰まり、末梢まで血液が行き届かなくなることにより発症します。

足先に血液が行き届かなくなることにより酸素が供給されなくなり、足が痺れたり冷たく感じるようになります。さらに、重症化すると足に潰瘍や壊死が発生し、悪臭も発生するようになっていきます。

足の痺れや冷感、悪臭により日常生活にも重大な影響を及ぼし、悪化してしまうと足を切断するしかなくなってしまう場合もあります。

重症下肢虚血の一種であるバージャー病(閉塞性血栓性血管炎)は国が指定する特定疾患治療研究対象疾患(難病)に定められており、詳細なメカニズムは判明していないものの、喫煙が発症に大きく関係していることがわかっています。

(3)脂肪由来幹細胞を用いた重症下肢虚血の治療

この治療法は、前述のとおり患者本人の皮下脂肪から製造した「脂肪由来幹細胞」を下肢(足)の筋肉内に投与することにより、重症下肢虚血(閉塞性動脈硬化症、バージャー病等)の症状改善を図る治療法です。

脂肪由来幹細胞にはVEGFやSDF-1などの血管の形成、新生に作用する因子を分泌する能力があることが知られており、虚血状態になってしまっている下肢に脂肪由来幹細胞を投与することにより、血管の形成、新生が促進され、酸素の供給が回復することにより重症下肢虚血の症状改善が期待できます。

韓国の研究グループが行った研究では、この治療法によりバージャー病患者、糖尿病性潰瘍患者に対する痛みの軽減、歩行能力の改善、潰瘍、壊死の治癒等の治療効果が報告されています。


「脂肪由来幹細胞を用いた重症下肢虚血の治療」は2018年6月時点では研究として2件、治療として4件の医療機関で提供されており、当事務所でも計画の作成実績があります。

この治療法の提供を検討している方は、お気軽にご相談ください。

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