再生医療等安全性確保法が施行されて半年が経過し、特定細胞加工物製造に関しては経過措置期間が終了しました。
現在、五月末時点での再生医療等安全性確保法の施行状況(再生医療等安全性確保法に基づく手続きを行った件数)が厚生労働省のHPに公開されています。厚生労働省「再生医療について」(なお、細かいことを言うようですが、このページタイトルは正しくないように思われます。正しくは「再生医療等について」ではないでしょうか。)
現在の施行状況について少し考察していきたいと思います。
①認定再生医療等委員会について
特定認定再生医療等委員会が10件、それ以外の認定再生医療等委員会が21件となっています。
特定認定再生医療等委員会についてはほぼ想定されていたとおりの数かと思いますが、第3種のみの認定再生医療等委員会については思っていたよりも少ないという印象があります。
自院で設置しなくても、他の機関が設置した委員会で審査を受ければ問題ないと思った医療機関が多かったのでしょうか。
認定数よりも法令に準拠した運営がされていないと思われる委員会が多いことの方が気になります。
以前のコラムでも書いたように、再生医療等委員会も厚生労働省又は地方厚生局の監督を受けることになりますので、法令に準拠した運営がなされていなければ行政指導、改善命令などを受けるおそれがあります。
しかしながら、認定された委員会の中には、ホームページがあるのに審査業務の規定、委員名簿、審査の記録などの公開が義務付けられた事項を公開していない委員会が多く見られます。
このような、法令を遵守していない委員会は今後立ち入り調査、改善命令を受けることになる可能性もあるかと思われますし、そもそも法令を遵守していない=法令を理解できていない委員会に審査を依頼したいと思わない医療機関が多いのではないでしょうか。
②特定細胞加工物製造について
許可が4件、届出が1,184件となっています。
これはPMDAの施設調査担当者の方もおっしゃっていたことですが、想定されていたよりも許可申請数が大幅に少ないことが気にかかります。申請済みで許可待ちを入れてもまだ20件ほどしかないそうです。培養加工の外部委託については本格化するのはまだ先のことになりそうです。
一方で、届出は1000件以上とかなりの数となっています。大部分がPRP療法や脂肪移植だと思われますが、これから11月24日までにこれだけの数の医療機関が再生医療等提供計画を提出するとなると審査する認定再生医療等委員会や届出を受理する地方厚生局は相当大変であろうと思われます。
届出事業者にも、製造管理や品質管理についての遵守事項は適用されますが、遵守した運営が行われていない事業者も当分は野放しになるのではないかと思います。
③再生医療等提供計画について
第3種の3件のみとなっています。
まだ特定細胞加工物製造への対応で手一杯だったというところでしょうか。
なお、正式な情報ではありませんが弊事務所の情報収集によると、内訳はPRP療法が2件、脂肪幹細胞を用いた乳房再建術が1件であろうと思われます。
なお、届出なので提出してしまえば一安心だと考えている医療機関の管理者様も多いかもしれませんが、そのようなことはありません。
届出制にした目的は、実態(どこの医療機関でどのような再生医療等が行われているか)を把握することにあります。
届出を行うことにより再生医療等を行っていることが厚労省に知られてしまいますので、何か問題があった場合(たとえば、同様の再生医療等を提供している医療機関で健康被害が発生した場合)は速やかに立入調査や改善命令などの措置を受けることになると思われます。
また、適切性を欠く計画(安全性に関するエビデンスが不十分な場合など)については、仮に委員会の審査をパスして計画提出まで漕ぎつけることができたとしても、立入調査や改善命令、行政指導等を受ける可能性もありますので、計画を提出できればめでたしめでたしではなく、提出後のことまで考えてしっかりとした計画を作成、提出することが必要となるでしょう。