再生医療等と新型コロナウイルス(COVID-19)

このたびの新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、不安でご不便な日々をお過ごしの皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

本稿では、再生医療等と新型コロナウイルスというテーマで3点お話させていただきたいと思います。

①新型コロナウイルス感染症を対象とした再生医療等

現在、国内外でいくつかのグループによって新型コロナウイルス感染症を治療対象とした再生医療等に関する研究が始まっているようです。主に骨髄や臍帯血を由来とした「間葉系幹細胞」を投与することにより、アビガン等の薬剤では治療効果が得られない重症患者の症状改善を図るという方向性での研究が多いかと思います。

間葉系幹細胞が持つ免疫調整機能、抗炎症機能を利用して、新型コロナウイルス感染症の重症化に関係するといわれるサイトカインストームを抑制するという作用機序であると推測されます。

     

自分自身の「間葉系幹細胞」を使おうとすると培養して十分な数に増やすのに数週間~1か月程度かかってしまい重症患者の治療には間に合わないので、ほとんどの研究が他人由来の幹細胞を用いる治療法ではないかと思います。

その場合、再生医療等安全性確保法では「第1種再生医療等」と呼ばれる最もリスクが高い技術に分類され、その分手続き的な難易度も高いものとなります。現時点で「第1種再生医療等」を実施している医療機関はほぼすべてが大学病院となっています。

「再生医療等」以外に国内で幹細胞を投与する方法はもう一つあり、医薬品医療機器等法に基づく治験として投与することも可能です。しかしながら、こちらに関しても民間の医療機関が実施するハードルは高いのが現状です。

    

新型コロナウイルス感染症を対象とした再生医療等というのは今後の進展が期待される技術ではありますが、実用化されるまでにはまだまだ時間がかかるのではないかと思います。また、もし実用化されたとしても民間の医療機関で合法的に提供するには法律的なハードルも高いと考えられます。

②新型コロナウイルス感染症に対応した法令改正

新型コロナウイルス感染症による影響を受けて、「再生医療等安全性確保法施行規則」が2度にわたって改正されています。

一点目は、再生医療等提供計画を審査する認定再生医療等委員会について、以下の条文が追加され、条件を満たす場合は書面による審査を行うことが可能となりました。

5 認定再生医療等委員会は、法第二十六条第一項第一号に規定する業務を行う場合であって、災害その他やむを得ない事由があり、かつ、保健衛生上の危害の発生若しくは拡大の防止又は再生医療等を受ける者の保護の観点から、緊急に再生医療等提供計画を提出し、又は変更する必要がある場合には、第六十三条、前条及び次条第二項の規定にかかわらず、書面により審査等業務を行い、結論を得ることができる。この場合において、当該認定再生医療等委員会は、後日、当該再生医療等の提供にあたって留意すべき事項又は改善すべき事項について、次条第二項の規定に基づき、認定再生医療等委員会の結論を得なければならない。

https://www.mhlw.go.jp/content/000626938.pdf

ただし、「保健衛生上の危害の発生若しくは拡大の防止又は再生医療等を受ける者の保護の観点から、緊急に再生医療等提供計画を提出し、又は変更する必要がある場合」に限られていますので、通常の審査を書面により行うことができるわけではないことには注意が必要となります。

 

2点目に、再生医療等を受ける者等への説明及び同意の取得は文書により行う必要がありましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、電磁的方法(メールでの送信等)によって行うことができることになりました。

  

今回改正された二点ともに、一般の医療機関で直ちに対応することが必要というものではありませんが、今後の動向が予測できない中で活用する機会が無いとは言い切れないので、知識としては持っておくことが望ましいかと思います。

③再生医療等とオンライン診療

新型コロナウイルス感染症が拡大する中では医療機関の受診にも感染リスクが付きまとうこともあり、時限措置としてオンライン診療に関する要件が緩和されています。

通常であれば要件を満たした上で必要な届出を行う等の条件を満たした場合のみ「オンライン診療料」を診療報酬に算定できますが、新型コロナウイルス感染症が収束するまでは事前の手続きなしで算定できるようになり、算定できる範囲も拡大されています。

あくまでも時限的な措置ですので、オンライン診療自体の要件が緩和されたわけではないということには注意が必要ですが、これを機にオンライン診療を導入する医療機関が増加することが予想されます。

  

再生医療等については、現時点ではほとんどが保険適用外の自由診療であるために「オンライン診療料」の算定とは直接関係ないかと思います。

しかしながら、法令により要求されている再生医療等提供後の経過観察の一部をオンライン診療で行うことにより、患者様の負担軽減や新型コロナウイルス感染拡大の防止にもつなげることができるため、自由診療のみを行っている再生医療等提供医療機関にとってもオンライン診療の体制構築をするメリットはあるのではないでしょうか。

ただし、その場合でも適切な医療の提供を行うために、メインは対面での診療を行いオンライン診療は補助として用いる、情報セキュリティやプライバシーの確保を行う等、オンライン診療に関する指針に沿った方法で行うことが望ましいと思います。

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