医療機関における特定細胞加工物製造の組織体制

本稿では、医療機関内で特定細胞加工物(PRP:多血小板血漿 等)の製造を行う場合の組織体制について説明させていただきます。

①施設管理者の設置

まず、以下の規定に基づき施設管理者を設置する必要があります。

(管理者の設置)
第四十三条
特定細胞加工物製造事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、特定細胞加工物の製造を実地に管理させるために、細胞培養加工施設ごとに、 特定細胞加工物に係る生物学的知識を有する者その他の厚生労働省令で定める基準に該当する者を置かなければならない 。

 再生医療等安全性確保法

勘違いしやすいのが、施設管理者=医療機関管理者(院長)ではないということです。
施設管理者は「特定細胞加工物に係る生物学的知識を有する者」と定められており、院長がこの要件に該当しない場合は別の方を施設管理者とすることが求められます。(「その他厚生労働省令で定める基準に該当する者」とありますが、「特定細胞加工物に係る生物学的知識を有する者」以外に基準は定められていません。)

比較的規模の小さい診療所等の場合は、院長が自ら再生医療等を実施する場合も多いのであまりこの点が問題になることは無いかもしれません。
しかしながら、複数の診療科を有する病院等では、院長は再生医療等を実施しない場合も多いですので、その場合に院長を細胞培養加工施設の施設管理者としてしまうと基準を満たさないおそれがあります。
そのような場合は、院長ではなく、実際に再生医療等を提供する医師の方を施設管理者にすべきかと思います。

そして、施設管理者の業務は以下のように定められています。

第九十四条
施設管理者 は、次に掲げる業務を行わなければならない。
一 製造管理及び品質管理に係る業務(以下「製造・品質管理業務」という。)を統括し、その適正かつ円滑な実施が図られるよう管理監督すること。
二  品質不良その他特定細胞加工物の品質に重大な影響が及ぶおそれがある場合においては、所要の措置が速やかに採られていること及びその進捗状況を確認し、必要に応じ、再生医療等提供機関の医師又は歯科医師へ報告し、得られた指示に基づき、改善等所要の措置を採るよう指示すること。
2 特定細胞加工物製造事業者は、施設管理者が業務を行う際に支障を生ずることがないようにしなければならない。

 再生医療等安全性確保法施行規則

このように、施設管理者が製造・品質管理業務を実際に管理監督する立場であることが求められていることからも、実際に再生医療等の実施(特定細胞加工物の製造)に携わる方を施設管理者にすることが重要であることがわかります。

②製造部門及び品質部門の設置

続いて、施設管理者の監督下に製造部門(製造管理に関わる部門。製造を行う部門ではありません。)と品質部門(品質管理に関わる部門)を設置する必要があります。

(製造部門及び品質部門)
第九十三条
特定細胞加工物製造事業者は、細胞培 養加工施設ごとに、施設管理者の監督の下に、 製造管理に係る部門(以下「製造部門」という。) 及び 品質管理に係る部門(以下「品質部門」という。) を置かなければならない。
2 品質部門は、製造部門から独立していなければならない 。

 再生医療等安全性確保法施行規則

第2項に「品質部門は、製造部門から独立していなければならない。」とありますが、実際は規模の小さい施設の場合は、同時に両部門の業務を行わないのであれば製造部門と品質部門の担当者を同じとすることは可能であるとされています。

また、製造部門及び品質部門の担当者と施設管理者の兼務を禁止する規定もありませんので、一人で三つの役職を兼務することも可能です。
医療機関内で特定細胞加工物を製造する場合は、施設管理者、製造部門の担当者、品質管理者の三つの役職をすべて再生医療等を実施する医師が兼務することが多いかと思いますし、法令上も問題ありません。

③職員、業務責任者

法令上、業務責任者の設置及び職員の確保については以下のように定められています。

(職員)
第九十五条 特定細胞加工物製造事業者は、製造・品質管理業務を適正かつ円滑に実施し得る能力を有する責任者(以下「業務責任者」という。)を、細胞培養加工施設の組織、規模及び業務の種類等に応じ、適切に置かなければならない。
2 特定細胞加工物製造事業者は、細胞培養加工施設の組織、規模及び業務の種類等に応じ、適切な人数の業務責任者を配置しなければならない。
3 特定細胞加工物製造事業者は、製造・品質管理業務を適切に実施し得る能力を有する人員を十分に確保しなければならない。
4 特定細胞加工物製造事業者は、製造・品質管理業務に従事する職員(施設管理者及び業務責任者を含む。)の責務及び管理体制を文書により適切に定めなければならない。

 再生医療等安全性確保法施行規則

まず、業務責任者の設置についてですが、実務的には②で説明した製造部門の責任者としての製造管理業務責任者、品質部門の責任者としての品質管理業務責任者などを設置する場合が多いのではないかと思います。
業務責任者についても、兼務を禁止する規定はないため複数の業務責任者の兼務や、施設管理者との兼務も問題ありません。

続いて、職員の確保についてですが、「製造・品質管理業務を適切に実施し得る能力を有する人員を十分に確保しなければならない。」と定められており、具体的な必要人数などについては特に規定はありません。
そのため、極端な話をすると再生医療等を実施する医師一人だけでも法令上は問題ないと考えられます。

注意しなければならないのが、第4項に「製造・品質管理業務に従事する職員(施設管理者及び業務責任者を含む。)の責務及び管理体制を文書により適切に定めなければならない。」と定められていることです。
ここで言う文書とは組織図が例として挙げられますが、例え一人ですべての業務を行うのであっても、組織図を作成し責務及び管理体制を記載しておく必要があります。

  

以上が医療機関内で特定細胞加工物の製造を行う場合の組織体制についての説明となります。注意点としては以下の二つが挙げられます。
①施設管理者=院長ではなく、実際に業務を行う方を施設管理者とすることが求められる。
②責務及び管理体制を定めた組織図を作成する必要がある。

なお、ここではPRP等の培養操作を伴わない特定細胞加工物を製造する場合を想定しています。
細胞培養を伴う特定細胞加工物(幹細胞や線維芽細胞、活性化リンパ球 等)の製造を行う場合も適用される法令自体は一緒ですが、各責任者の兼務は避けるなど、より高度な製造管理・品質管理の体制を構築することが望ましいと思われます。

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