医療機関における特定細胞加工物の製造管理及び品質管理等について

本稿では、再生医療等提供医療機関における特定細胞加工物の製造管理・品質管理等についてお話しさせていただきます。

  

再生医療等安全性確保法では、医療機関内で再生医療等に用いる特定細胞加工物を製造する場合は「特定細胞加工物製造届」を提出することになっており、これを提出して医療機関内で多血小板血漿(PRP)などを製造している医療機関が多く見られます。

この場合、医療機関外で特定細胞加工物を製造する場合に必要な「特定細胞加工物製造許可申請」に比べると手続きは非常に簡便なものなりますが、特定細胞加工物の製造管理・品質管理等については医療機関外で実施する場合(以後、「許可施設」と記載させていただきます」と同じ基準が課せられています。

(特定細胞加工物製造事業者の遵守事項)
第四十四条  厚生労働大臣は、厚生労働省令で、細胞培養加工施設における特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法、試験検査の実施方法、保管の方法並びに輸送の方法その他特定細胞加工物製造事業者がその業務に関し遵守すべき事項を定めることができる。

  再生医療等安全性確保法

法律上はこのように規定されており、「厚生労働省令=再生医療等安全性確保法施行規則」によって製造管理・品質管理等の方法について守らなければならない基準が定められています。

医療機関内で製造される特定細胞加工物はPRPのように比較的簡便な操作で製造されるものが多いですが、許可施設で複雑な工程により製造される培養幹細胞等と一部を除いてほぼ同じ基準が適用され、再生医療等安全性確保法に定められた遵守事項に従って製造管理や品質管理、その結果等の記録作成を行う必要があります。

  

そして、この遵守事項を守っていない場合には、厚生労働省は立入検査や停止命令を行うことができる権限が法令上定められています。

(停止命令)
第五十一条  厚生労働大臣は、届出事業者が次の各号のいずれかに該当するときは、期間を定めて特定細胞加工物の製造の業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。
 当該届出に係る細胞培養加工施設の構造設備が第四十二条の基準に適合しなくなったとき。
 第三十五条第四項各号のいずれかに該当するに至ったとき。
 前二号に掲げる場合のほか、この法律、移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律 若しくは医薬品医療機器等法 その他薬事に関する法令で政令で定めるもの又はこれらの規定に基づく処分に違反したとき。
(立入検査等)
第五十二条  厚生労働大臣は、許可事業者又は届出事業者が設置する当該許可又は届出に係る細胞培養加工施設の構造設備が第四十二条の基準に適合しているかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該許可事業者若しくは届出事業者に対し、必要な報告をさせ、又は当該職員に、当該細胞培養加工施設若しくは事務所に立ち入り、その構造設備若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
 厚生労働大臣は、前項に定めるもののほか、細胞培養加工施設においてこの章の規定若しくはこの章の規定に基づく命令若しくは処分に違反する特定細胞加工物の製造が行われていると認めるとき、又は再生医療等技術の安全性の確保等その他再生医療等の適正な提供のため必要があると認めるときは、特定細胞加工物の製造をする者に対し、必要な報告をさせ、又は当該職員に、細胞培養加工施設若しくは事務所に立ち入り、その構造設備若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
 第二十四条第三項の規定は前二項の規定による立入検査について、同条第四項の規定は前二項の規定による権限について準用する。

  再生医療等安全性確保法

法律的な文章でわかりづらいですが、第51条第3号を要約すると「厚生労働大臣は、届出事業者(=特定細胞加工物製造届を提出した医療機関等)がこの法律に違反したときは特定細胞加工物の製造の業務の停止を命ずることができる」ということが規定されています。
実務上は、遵守事項に違反している可能性がある場合は第52条に基づく立入調査が行われ、調査の結果違反していることが明らかになった場合は停止命令が出されるという流れになることが多いと思われます。

  

「特定細胞加工物が製造できなくなる=再生医療等が提供できなくなる」ということですので、再生医療等提供医療機関としては停止命令を受けることは絶対に避けなければなりません。

現在のところ、実際にこの規定により停止命令が出された事例は非常に少ないですが、再生医療等を提供する医療機関が増え続ている中で再生医療等に関する監視も強化されていくことが予想され、今後は立入調査も増えていく可能性があります。
なお、特定細胞加工物製造に関する記録は基本的に10年間(一部例外で30年間の場合あり)保管しなければならないため、今後監視が強化された場合には、過去の記録が無いことを指摘されることも想定されますので、現在監視が厳しくないからと言って遵守事項をないがしろにすべきではありません。

次回の記事からは、医療機関における特定細胞加工物の製造管理・品質管理等について各項目ごとに説明させていただきます。

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