再生医療等を中止・終了するときに必要な手続き|「やめたら終わり」ではない実務上の注意点

再生医療等は、提供計画を提出して治療を開始するときだけでなく、治療の提供を中止・終了するときにも手続きが必要です。

PRP療法、脂肪由来幹細胞治療、線維芽細胞治療、免疫細胞療法などを実施している医療機関では、患者数の減少、医師の退職、CPCとの契約終了、治療方針の変更、委員会変更、事業整理などにより、再生医療等の提供を停止する場面があります。

このとき、「もう患者に提供していないから何もしなくてよい」と考えてしまうのは危険です。

再生医療等の提供を中止または終了するときにも、所定の届出が必要です。近畿厚生局は、再生医療等の提供を中止する場合は中止日から10日以内に様式第4により届出が必要であり、終了する場合は治療計画であれば遅滞なく別紙様式第9の2により届出が必要であると案内しています。(近畿厚生局)

本記事では、再生医療等を中止・終了するときに医療機関が注意すべき実務上のポイントを解説します。


1. 「中止」と「終了」は分けて考える

再生医療等の手続きでは、「中止」と「終了」を分けて考える必要があります。

中止は、再生医療等の提供を停止する段階です。

たとえば、今後新たな患者への提供を行わない、治療メニューとして停止する、CPCとの契約が終了したため提供できなくなる、実施医師が退職したため提供できなくなる、といった場面が考えられます。

一方で、終了は、中止後に必要な患者対応や経過観察などを終え、提供計画としての対応を完了する段階です。

つまり、治療の新規提供をやめた時点で、直ちにすべての義務がなくなるわけではありません。

中止後も、既に再生医療等を受けた患者に対する必要な措置が残っている場合があります。

この点を理解せずに、単に治療メニューを削除しただけで終わらせてしまうと、届出漏れや報告漏れにつながる可能性があります。


2. 中止するときは、10日以内に中止届が必要

再生医療等の提供を中止した場合には、中止の日から10日以内に再生医療等提供中止届書を提出する必要があります。

近畿厚生局は、再生医療等の提供を中止するときは、中止日から10日以内に様式第4により届出を行い、認定再生医療等委員会への通知も必要であると案内しています。(近畿厚生局)

また、e-再生医療では、提出済みの提供計画に関するその他の提出様式として、再生医療等提供中止届書、疾病等報告書、定期報告書、再生医療等提供終了届書などが掲載されています。(e-再生医療)

実務上は、次のような流れで対応します。

・中止日を決める
・中止理由を整理する
・既に治療を受けた患者への対応状況を確認する
・中止届を作成する
・所管厚生局へ提出する
・認定再生医療等委員会へ通知する
・中止後に必要な患者フォローや報告を継続する

ここで重要なのは、「いつを中止日とするか」です。

新規患者の受付を停止した日、最後の投与日、院内で中止を決定した日など、運用によって判断が分かれる可能性があります。

後から説明できるように、中止を決定した経緯と中止日を記録しておくことが重要です。


3. 中止しても、すぐに定期報告や疾病等報告が不要になるわけではない

中止届を提出した後でも、再生医療等の提供に関する義務がすべて終了するわけではありません。

厚生労働省の定期報告書等の記載要領では、再生医療等提供中止届書を提出した後も、再生医療等提供終了届書または研究の場合は総括報告書の概要を提出するまでの期間に、施行規則で定める疾病等が発生した場合には、疾病等報告書の提出が必要であるとされています。(厚生労働省)

また、委員会の案内でも、中止届提出後も再生医療等の提供が終了するまでは、疾病等報告や定期報告等が必要であると説明されています。(東北大学認定再生医療等委員会)

つまり、中止届は「新たな提供を止める手続き」であり、「すべての管理義務を終了させる手続き」ではありません。

中止後も、以下の対応が必要になることがあります。

・既に治療を受けた患者のフォローアップ
・有害事象や疾病等の確認
・定期報告の未報告期間の整理
・症例一覧の整理
・CPCとの記録確認
・説明同意文書や診療記録の保管
・提供終了届の準備

「中止届を出したからもう何もしなくてよい」と考えないことが重要です。


4. 治療としての再生医療等を終了するときは、提供終了届が必要

治療として再生医療等を行っていた場合、中止後に必要な措置を終えた後には、再生医療等提供終了届書の提出が必要です。

近畿厚生局は、治療計画の場合、再生医療等の提供を終了するときは遅滞なく別紙様式第9の2により届出を行い、認定再生医療等委員会への通知が必要であると案内しています。(近畿厚生局)

e-再生医療でも、その他の提出様式として、再生医療等提供終了届書(治療)(別紙様式第9の2)が示されています。(e-再生医療)

終了届を提出する前には、少なくとも次の点を確認する必要があります。

・新規提供を停止しているか
・既に治療を受けた患者への必要な措置が完了しているか
・疾病等報告が必要な事象がないか
・不適合報告が必要な事象がないか
・未報告の定期報告期間がないか
・症例一覧や記録が整理されているか
・CPCとの製造記録や出荷記録が確認できるか
・委員会への通知に必要な書類が整っているか

終了届は、単なる「終了しました」という連絡ではなく、提供計画として必要な対応を終えたことを整理する手続きと考えるべきです。


5. 未報告の定期報告がないかを必ず確認する

再生医療等を中止・終了する際に、特に見落としやすいのが定期報告です。

近畿厚生局は、再生医療等の提供を中止・終了する場合にも手続きが必要であり、終了時には定期報告の未報告期間がないか確認するよう案内しています。(近畿厚生局)

定期報告は、提供計画を提出した日から起算して1年ごとに発生します。

そのため、治療実績が少ない場合や、すでに新規提供を停止している場合でも、未報告の期間が残っていることがあります。

確認すべき項目は、次のとおりです。

・提供計画の提出日
・直近の定期報告対象期間
・委員会への報告状況
・厚生局への提出状況
・中止日までの実施件数
・中止日以降のフォローアップ状況
・疾病等、不適合の有無
・安全性および科学的妥当性の評価

提供実績が0件であっても、定期報告が必要になる場合があります。

終了前には、提供計画番号ごとに、未報告期間がないかを確認することが重要です。


6. 患者フォローを終えずに終了扱いにしない

再生医療等を終了する際には、既に治療を受けた患者への対応が重要です。

たとえば、提供計画や説明同意文書で、投与後1か月、3か月、6か月などのフォローアップを予定している場合、そのフォローが未了のまま「終了」とするのは慎重に考える必要があります。

終了前には、次の点を確認します。

・フォローアップ予定の患者が残っていないか
・治療後の有害事象確認が済んでいるか
・必要な評価指標を取得しているか
・患者からの相談窓口をどうするか
・CPCとの契約終了後も必要な情報照会ができるか
・保管細胞や残余検体の取扱いをどうするか

特に、幹細胞治療や線維芽細胞治療では、細胞の保管、追加投与の可能性、契約上の保管期間、廃棄手続きなども関係する場合があります。

治療提供をやめることと、患者に対する安全管理を終えることは別です。

患者に不利益が生じないように、終了時の対応を整理する必要があります。


7. CPCとの契約終了時にも注意が必要

外部CPCに細胞加工を委託している場合、再生医療等の中止・終了に伴ってCPCとの契約も終了することがあります。

この場合、単に契約を解除するだけでなく、次の点を確認する必要があります。

・未投与の細胞加工物がないか
・凍結保存中の細胞があるか
・保管細胞の返還、廃棄、継続保管の取扱い
・製造記録、品質試験結果、出荷記録の保存
・疾病等発生時に後日照会できる体制
・患者からの問い合わせがあった場合の対応
・契約終了後の個人情報、記録、検体の取扱い
・提供終了届や定期報告に必要な情報の提供

CPCとの契約が終了してから、定期報告や疾病等報告に必要な情報が取得できないという事態は避けなければなりません。

特に、ロット番号、出荷判定記録、品質管理試験結果、輸送記録などは、患者安全や報告対応に関わる重要な情報です。

契約終了前に、必要な情報を確保しておくことが重要です。


8. ホームページや広告も停止・修正する

再生医療等の提供を中止または終了した場合には、ホームページ、LP、SNS、広告、院内掲示などの表示も見直す必要があります。

提供していない治療を掲載し続けると、患者が現在も受けられる治療だと誤解する可能性があります。

特に注意すべき媒体は、次のとおりです。

・医療機関のホームページ
・再生医療専用LP
・Googleビジネスプロフィール
・Instagram、X、YouTubeなどのSNS
・Web広告
・紙のパンフレット
・院内掲示
・紹介会社やポータルサイトの掲載情報

提供を中止した治療については、受付停止中であることを明示する、または掲載を削除するなどの対応が必要です。

また、再開予定がある場合でも、提供計画やCPC契約、実施医師、委員会手続きが整っていない段階で、患者を誘引する広告を続けることは避けるべきです。


9. 中止・終了前の実務チェックリスト

再生医療等を中止・終了する際には、次のチェックリストを使うと整理しやすくなります。

中止前後の確認

・中止日を決めたか
・中止理由を整理したか
・中止届を10日以内に提出する準備をしたか
・認定再生医療等委員会への通知を行うか
・新規患者の受付を停止したか
・予約済み患者への説明を行ったか

患者対応の確認

・既に治療を受けた患者のフォローアップ予定を確認したか
・有害事象や疾病等の有無を確認したか
・患者からの問い合わせ窓口を整理したか
・追加投与予定の患者への対応を決めたか
・細胞保管中の患者への説明を行ったか

報告・記録の確認

・未報告の定期報告期間がないか
・疾病等報告が必要な事象がないか
・不適合報告が必要な事象がないか
・症例一覧を整理したか
・診療記録、説明同意文書、CPC記録を保管しているか

CPC・委員会対応の確認

・CPCとの契約終了時の記録取得を確認したか
・保管細胞、残余検体、製造記録の取扱いを確認したか
・委員会への通知方法を確認したか
・提供終了届に必要な情報を整理したか

広告・院内表示の確認

・ホームページの治療メニューを修正したか
・LP、SNS、広告を停止または修正したか
・院内掲示やパンフレットを更新したか
・紹介会社やポータルサイトの掲載情報を確認したか

中止・終了は、単に治療をやめるだけではありません。

患者、記録、報告、CPC、広告まで含めて整理する必要があります。


まとめ

再生医療等を中止・終了するときに注意すべきポイントは、次のとおりです。

・再生医療等は、提供を中止・終了するときにも届出が必要
・中止するときは、中止日から10日以内に中止届を提出する
・治療としての再生医療等を終了するときは、遅滞なく提供終了届を提出する
・中止届を提出しても、終了届までの間は疾病等報告や定期報告が必要になる場合がある
・終了前に未報告の定期報告期間がないか確認する
・患者フォローや有害事象確認を終えずに終了扱いにしない
・CPCとの契約終了時には、製造記録、品質試験結果、保管細胞の取扱いを確認する
・ホームページ、LP、SNS、広告の表示も停止・修正する

再生医療等提供計画は、提出して治療を始めるときだけでなく、中止・終了時にも適切な管理が必要です。

林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成だけでなく、中止届、提供終了届、定期報告、疾病等報告、不適合報告、CPCとの契約終了時の整理、委員会対応まで、再生医療等の導入から終了までをサポートしています。

再生医療等の中止・終了手続きや、未報告期間の確認、CPCとの契約整理でお困りの医療機関様は、まずはお気軽にご相談ください。

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