
再生医療等を自由診療として提供する医療機関にとって、ホームページ、LP、SNS、広告記事などの情報発信は重要です。
PRP療法、脂肪由来幹細胞治療、線維芽細胞治療、免疫細胞療法などは、患者にとって専門性が高く、内容を理解しにくい治療です。
そのため、医療機関が分かりやすく情報提供すること自体は、患者の適切な治療選択にとって重要です。
しかし、再生医療等は、自由診療であること、高額になりやすいこと、期待される効果や安全性の説明に慎重さが求められることから、広告表現には特に注意が必要です。
特に、次のような表現は問題になりやすいです。
・厚生労働省承認の再生医療
・国が認めた治療
・安全な幹細胞治療
・副作用のないPRP療法
・若返り効果
・根本治療
・必ず改善
・再生医療で治る
・症例写真だけを強調する広告
・費用やリスクを十分に記載しない自由診療広告
本記事では、再生医療等を提供する医療機関が、ホームページや広告表現で注意すべき実務上のポイントを解説します。
1. 再生医療等提供計画の提出は「厚生労働省の承認」ではない
再生医療等の広告で特に注意すべきなのが、「厚生労働省承認」「国が認めた再生医療」「厚労省認可の治療」といった表現です。
再生医療等安全性確保法に基づく再生医療等提供計画は、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、厚生労働大臣または地方厚生局長に提出して実施するものです。
しかし、これは治療の有効性や安全性について、国が個別に承認・認可・保証したという意味ではありません。
日本再生医療学会も、再生医療等安全性確保法に基づく手続きについて、厚生労働省への「届出」を経て実施されるものであり、行政庁による許可、認可、免許のような「承認」の判断表示が行われるものではないと注意喚起しています。
そのため、広告やホームページでは、次のような表現は避けるべきです。
・厚生労働省承認の再生医療
・厚労省認可済み治療
・国が効果を認めた治療
・厚生労働省に認められた安全な治療
・公的に承認された幹細胞治療
一方で、事実として記載するのであれば、次のような表現が考えられます。
・本治療は、再生医療等安全性確保法に基づき、所定の手続きを経て提供するものです。
・本治療は、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、再生医療等提供計画を提出して実施するものです。
・再生医療等提供計画の提出は、治療効果を国が承認または保証するものではありません。
患者に安心感を与えるために制度上の手続きを説明することは重要ですが、国が治療効果を承認しているかのような表現は避ける必要があります。
2. 自由診療の広告では、治療内容・費用・リスクを一体で示す
再生医療等は、多くの場合、自由診療として提供されます。
自由診療に関する医療広告では、患者が適切に治療を選択できるように、治療内容、費用、主なリスク・副作用などを分かりやすく示す必要があります。
医療広告ガイドライン上、広告可能事項の限定解除が認められるためには、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること、問い合わせ先を明示すること、自由診療に係る通常必要とされる治療内容・費用等を情報提供すること、主なリスク・副作用等を情報提供することが求められています。
そのため、再生医療等のホームページでは、少なくとも次の情報を記載することが望ましいです。
・自由診療であること
・治療の目的
・治療の流れ
・採血、脂肪採取、細胞加工、投与などの内容
・標準的な治療期間
・標準的な治療回数
・費用の目安
・追加費用が発生する場合の内容
・主なリスク、副作用、不利益
・効果には個人差があること
・効果が保証されないこと
・代替治療の有無
特に注意すべきなのは、メリットだけを大きく表示し、費用やリスクを小さく表示する構成です。
「幹細胞で若々しく」「手術を避けたい方へ」「根本改善を目指す」などの訴求をする場合でも、自由診療であること、費用、リスク、副作用、効果が保証されないことを、患者が見つけやすい形で記載する必要があります。
3. 「副作用がない」「安全な治療」と断定しない
再生医療等の広告では、安全性を過度に強調しないことが重要です。
特に、自己血や自己細胞を用いる治療では、「自分の細胞だから安全」「副作用がない」「体にやさしい」といった表現が使われやすくなります。
しかし、自己由来の細胞を用いる場合でも、採血、脂肪採取、局所注射、関節内投与、静脈投与、細胞加工、保管、輸送などの各段階でリスクがあります。
たとえば、PRP療法であれば、採血に伴う疼痛、内出血、迷走神経反射、投与部位の疼痛、腫脹、感染などが考えられます。
脂肪由来幹細胞治療であれば、脂肪採取に伴う出血、疼痛、感染、瘢痕、投与に伴う発熱、悪寒、アレルギー反応、体調不良などを説明する必要があります。
したがって、広告表現としては、次のような断定は避けるべきです。
・副作用はありません
・安全な治療です
・体に負担のない治療です
・自己細胞なのでリスクはありません
・安心して受けられます
より適切な表現としては、次のようなものが考えられます。
・自己由来の細胞を用いる治療ですが、採取や投与に伴うリスクがあります。
・治療後に疼痛、腫脹、発熱、感染などが生じる可能性があります。
・すべての患者様に効果が保証されるものではありません。
・治療の適応は、医師が診察、既往歴、検査結果等を踏まえて判断します。
患者に安心してもらうためには、リスクを隠すのではなく、分かりやすく説明することが重要です。
4. 効果を断定する表現は避ける
再生医療等は、患者にとって期待の大きい治療です。
そのため、広告表現で「治る」「再生する」「若返る」「痛みが消える」といった表現を使いたくなる場面があります。
しかし、医療広告では、治療効果について患者を誤認させる表現は避けなければなりません。
特に、再生医療等は患者の状態、疾患の進行度、年齢、既往歴、生活習慣、併用治療などによって結果が異なります。
そのため、次のような表現は注意が必要です。
・膝の痛みが治ります
・軟骨が再生します
・幹細胞で若返ります
・根本治療です
・手術を回避できます
・慢性疼痛を改善します
・認知機能が回復します
・アンチエイジング効果があります
治療の目的や期待される効果を説明することは可能ですが、断定的に効果を保証する表現は避けるべきです。
たとえば、次のような表現の方が適切です。
・疼痛や機能の改善を目的として行う治療です。
・症状の改善が期待される場合がありますが、効果には個人差があります。
・十分な効果が得られない場合があります。
・既存治療の代替となるかどうかは、患者様の状態により異なります。
・治療の適応は、医師が診察のうえ判断します。
広告では、患者の期待を高める表現よりも、患者が冷静に判断できる情報提供を重視する必要があります。
5. ビフォーアフター写真は、詳細情報なしで掲載しない
美容領域や整形外科領域では、症例写真やビフォーアフター写真を掲載したいというニーズがあります。
しかし、ビフォーアフター写真は、患者に効果を強く印象づけるため、掲載方法に注意が必要です。
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書では、ビフォーアフター写真について、通常必要とされる治療内容、費用、主なリスク・副作用などの詳細情報が付されていない場合、治療内容や効果について患者を誤認させるおそれがあるものとして広告できないと説明されています。
再生医療等で症例写真を掲載する場合には、少なくとも次の情報を併記することが重要です。
・治療名
・治療内容
・治療回数
・治療期間
・費用
・主なリスク、副作用
・効果には個人差があること
・同様の効果を保証するものではないこと
また、写真の加工、撮影条件の違い、照明や角度による印象操作にも注意が必要です。
症例写真は、患者にとって分かりやすい情報である一方、誤認を生じさせやすい情報でもあります。
「写真を見れば効果が分かる」という考えではなく、写真だけでは判断できない情報を補うことが必要です。
6. SNS投稿も医療広告になる可能性がある
近年は、ホームページだけでなく、Instagram、X、TikTok、YouTube、LINE公式アカウントなどを使って、再生医療等を発信する医療機関も増えています。
SNSは気軽に投稿できる一方で、医療広告規制の対象になり得る点に注意が必要です。
厚生労働省の事例解説書では、SNSにおける広告形態について、医療機関・医師等への特定性と誘引性を有する個人アカウントによる情報発信も医療広告に相当する旨が示されています。また、自由診療に関する限定解除要件やビフォーアフター写真について、必要な情報提供が一体的かつ一覧性をもってなされていない場合に問題となること、投稿内容と関係のないハッシュタグによる誘引が不適切であることも示されています。
SNSで特に注意すべき表現は、次のようなものです。
・症例写真だけを投稿する
・「若返り」「再生」「根本改善」などの訴求だけを投稿する
・費用やリスクを記載しない
・ハッシュタグで過度に誘引する
・患者の感想を効果保証のように見せる
・医師個人アカウントで医療機関へ誘導する
・キャンペーン価格だけを強調する
SNSでは文字数や画面構成の制約があります。
しかし、自由診療の再生医療等を宣伝する場合、投稿単体またはリンク先を含めて、患者が必要な情報に容易にたどり着ける構成にする必要があります。
7. 「キャンペーン価格」「期間限定」は慎重に扱う
自由診療では、キャンペーン価格やモニター募集を行う医療機関もあります。
しかし、再生医療等の広告で価格や割引を強調しすぎると、患者がリスクや必要性を十分に検討しないまま受診を決めてしまうおそれがあります。
医療広告ガイドラインでは、品位を損ねる内容の広告として、費用を過度に強調した広告や、提供される医療の内容と直接関係ない事項による誘引が問題とされる場合があります。自由診療を提供する医療機関のウェブサイトについては、ネットパトロール事業により監視指導体制の強化も進められています。
特に注意すべき表現は、次のようなものです。
・今だけ半額
・先着10名限定
・モニター価格で幹細胞治療
・無料カウンセリング当日契約で割引
・キャンペーン終了間近
・お得に再生医療を受けられます
価格を記載すること自体が直ちに問題になるわけではありません。
しかし、価格訴求が強すぎると、医療の内容よりも割引によって患者を誘引していると評価されるおそれがあります。
再生医療等では、価格よりも、治療の適応、内容、リスク、費用総額、代替治療、効果の限界を丁寧に説明することが重要です。
8. 患者の体験談は、掲載方法に注意する
患者の体験談や口コミを掲載したいという相談もあります。
しかし、医療広告では、患者の主観的な体験談を広告に利用することには慎重な判断が必要です。
特に、次のような体験談は問題になりやすいです。
・長年の痛みが消えました
・手術せずに済みました
・若返ったと言われました
・幹細胞治療で人生が変わりました
・他の治療では治らなかったのに改善しました
・もっと早く受ければよかったです
このような表現は、個人の感想であっても、患者に治療効果を強く期待させる可能性があります。
また、体験談は、患者ごとの条件や背景が異なるため、他の患者にも同様の効果があるかのように受け取られやすい点に注意が必要です。
患者の声を掲載する場合には、医療広告規制上の問題だけでなく、個人情報保護、同意取得、症例情報の匿名化、写真使用許諾なども確認する必要があります。
再生医療等では、患者の期待を過度に高める体験談よりも、治療の内容、適応、リスク、費用、効果の限界を客観的に説明する情報発信を優先すべきです。
9. 制作会社や広告会社任せにしない
再生医療等の広告やLPは、広告会社、制作会社、マーケティング会社が作成することもあります。
しかし、広告会社が医療広告規制や再生医療等安全性確保法の実務を十分に理解しているとは限りません。
特に、集患を重視するLPでは、次のような表現が入りやすくなります。
・効果を強調するキャッチコピー
・不安をあおる表現
・割引や限定性を強調する表現
・症例写真中心の構成
・患者の体験談を前面に出す構成
・リスクや費用をページ下部に小さく記載する構成
・厚生労働省への届出を承認のように見せる表現
再生医療等の広告では、見た目の訴求力だけでなく、法令遵守、患者説明、提供計画との整合性が重要です。
LPや広告を作成する場合には、公開前に次の点を確認すべきです。
・提供計画の内容と一致しているか
・説明同意文書と矛盾していないか
・対象疾患を広げすぎていないか
・効果を断定していないか
・費用、期間、回数、リスクが記載されているか
・委員会や厚生労働省に関する表現が正確か
・自由診療であることが分かるか
・症例写真や体験談の使い方に問題がないか
・SNS広告として配信する場合に必要な情報が表示されているか
広告会社任せにせず、医療機関側が最終的に確認する体制を作ることが重要です。
10. 再生医療等広告のチェックリスト
再生医療等のホームページや広告を公開する前には、次の項目を確認するとよいです。
制度説明に関する確認
・「厚生労働省承認」「国が認めた治療」と書いていないか
・再生医療等提供計画の提出を、承認や認可のように表現していないか
・委員会の審査を、治療効果の保証のように表現していないか
治療内容に関する確認
・対象疾患が提供計画と一致しているか
・治療方法、投与方法、投与回数が提供計画と一致しているか
・効果を断定していないか
・効果には個人差があることを記載しているか
・効果が保証されないことを記載しているか
自由診療に関する確認
・自由診療であることを明示しているか
・標準的な費用を記載しているか
・治療期間、回数を記載しているか
・主なリスク、副作用を記載しているか
・代替治療について説明しているか
写真・SNSに関する確認
・ビフォーアフター写真に必要情報を併記しているか
・写真だけで効果を誤認させる構成になっていないか
・SNS投稿で費用やリスク情報が確認できるか
・投稿内容と関係のないハッシュタグを使っていないか
運用体制に関する確認
・広告会社が作成した内容を医療機関側で確認しているか
・修正履歴を管理しているか
・提供計画や説明同意文書を変更した際に、ホームページも更新しているか
・医療広告ガイドラインの観点から定期的に見直しているか
広告は一度作って終わりではありません。
提供計画、費用、治療内容、委員会情報、リスク情報が変わった場合には、ホームページや広告も合わせて見直す必要があります。
まとめ
再生医療等の広告・ホームページ表現で注意すべきポイントは、次のとおりです。
・再生医療等提供計画の提出を「厚生労働省承認」「国が認めた治療」と表現しない
・自由診療では、治療内容、費用、期間、回数、リスク、副作用を分かりやすく記載する
・「副作用がない」「安全」「必ず改善」などの断定表現を避ける
・ビフォーアフター写真には、治療内容、費用、リスク等の詳細情報を併記する
・SNS投稿も医療広告になり得ることを前提に確認する
・価格やキャンペーンを過度に強調しない
・患者の体験談を効果保証のように使わない
・広告会社や制作会社任せにせず、医療機関側で内容を確認する
・提供計画、説明同意文書、ホームページ、LP、SNSの内容を一致させる
再生医療等の広告は、集患のためだけのものではありません。
患者が治療内容、費用、リスク、効果の限界を理解し、自分にとって必要な治療かどうかを判断するための情報提供でもあります。
林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成だけでなく、説明同意文書の整備、ホームページ・広告表現の確認、医療広告ガイドライン対応、委員会対応、変更届、定期報告、疾病等報告まで、再生医療等の導入と運用をサポートしています。
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