本稿では、再生医療と診療報酬の関係についてお話しさせていただきます。
再生医療は全て保険が適用されず、自由診療として全額自己負担だと思われている方も多いかもしれませんが、正確にはそうではありません。
再生医療と診療報酬の関係について、以下の3パターンがあります。
- 保険診療に該当し、全額について保険が適用される場合
- 評価療養に該当し、一部のみ保険が適用される場合
- 自由診療に該当し、全額自己負担となる場合
※本稿での「再生医療」は「再生医療等製品の治験」、「再生医療等製品を用いた治療」、「再生医療等」を指します。
1.保険診療に該当する場合
再生医療に使用する医療機器や再生医療等製品が保険収載されている場合は保険診療に該当します。この場合は保険診療として診療報酬を算定すればよく、難しく考える必要はありません。
実際に、「急性移植片対宿主病」、「重症心不全」の治療に用いられる再生医療等製品として保険収載されているものも存在しています。
ただ、これらの再生医療は専門性が高く対象患者数も限られており、少なくとも現時点では一般の医療機関で提供されることはほぼないかと思います。
2.評価療養に該当し、一部のみ保険が適用される場合
再生医療の中にも「評価療養」に該当し、保険外併用療養として保険診療との併用が可能な場合があります。具体的には以下の場合となります。
なお、評価療養とは、保険導入に向けての評価を行うことを前提とした制度ですので、以下のどれかに該当する場合でも保険導入に向けた評価を目的としたものでない場合は該当しない場合があります。
- 先進医療
- 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
- 医薬品医療機器等法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
- 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用
- (使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)
一般の医療機関でも実施される可能性があり得るのは三つ目の「医薬品医療機器等法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用」です。
例えば、医療機器として医薬品医療機器等法に基づく承認を受けているPRP(多血小板血漿)作製キットを使用する場合は、保険導入に向けた評価を行うものであればこれに該当する可能性があると考えられます。
この場合は、再生医療の提供のみが自費負担となり、それ以外の部分については保険を適用することが可能となります。再生医療を実施することを決定するまでに行った診察・検査や、再生医療を実施後の経過観察等に対して保険を適用できれば、患者様にとっては負担軽減につながる可能性があります。
ただし、保険外併用療養を実施するための要件等もあり、自費負担になる部分と保険適用になる部分が混合することになるため、医療機関側からすると最も複雑なケースとなります。
提供しようとする再生医療が評価療養に該当する場合は保険外併用療養の要件の確認、診療報酬の算定範囲の確認等、事前に十分確認しておくことが望ましいかと思います。
3.自由診療に該当し、全額自己負担となる場合
1、2のどちらにも該当しない再生医療の提供は自由診療となり、一連の診療全体が全額自己負担となります。なお、「再生医療等製品の治験」、「再生医療等製品を用いた治療」はどちらも2の評価療養に該当しますので、3に該当する場合があるのは「再生医療等」となります。
一連の診療全体が自由診療となるという点には注意が必要となります。
「再生医療等」に関するルールを定める「再生医療等安全性確保法」及び関連法令では治療提供後の措置として追跡調査等を行うことが努力義務として定められており、多くの場合は再生医療等提供後に何回か診察を受けてもらうことになるかと思います。
その場合は、自由診療である再生医療等の提供とその後の診察は一連の診療ということになりますので、再生医療等の提供だけでなくその後の診察も自由診療として全額自己負担としなければならないことになります。
(これに関しては疑義があるかもしれませんが、厚生労働省の保険診療担当部署に確認しています。再生医療等の提供とその後の定期診察を別々の診療として解釈している医療機関もありますが、適切ではないということになります。)
再生医療と診療報酬の関係は以上の3パターンとなります。1つ目については一般の医療機関で扱うことはほとんどないかもしれませんが、2つ目、3つ目については一般の再生医療等提供機関でも扱うものですので、正確に理解し、適正に対応することが求められます。