ロート製薬が新型コロナウイルス重症肺炎に対する再生医療治験を計画

今月23日、ロート製薬株式会社がCOVID-19(新型コロナウイルス)重症肺炎を対象とした他家間葉系幹細胞を用いた再生医療等製品の治験を計画していることを発表しました。

https://www.rohto.co.jp/news/release/2020/0623_01/

先日の記事で国内外で新型コロナウイルス感染症に対する再生医療等に関する研究が始まっているという内容を書きましたが、国産の細胞製剤を用いる治験は初めてとされています。

  

「ADR‐001」と呼ばれる他家(投与される本人以外由来)の脂肪由来幹細胞により構成される細胞製剤をCOVID-19(新型コロナウイルス)重症肺炎を対象とした患者に対して静脈内への点滴により投与し、安全性を評価する予定とされており、今年8月から来年12月までに6例を実施する計画となっています。

新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みとして、免疫に働く因子であるサイトカインが過剰に放出される「サイトカインストーム」により重篤な炎症が発生するというメカニズムが関わっていると考えられています。

脂肪由来幹細胞は間葉系幹細胞(自己増殖し続ける能力と脂肪細胞、骨芽細胞、筋細胞等の様々な種類の細胞へと分化できる能力を持つ細胞)の一種です。
間葉系幹細胞は様々な種類の細胞へと分化(変化)する能力に加えて、過剰な免疫を調整する能力や炎症を抑制する能力も有していることが示されています。
間葉系幹細胞が持つこのような能力を活かして、サイトカインストームを抑制することにより新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐことができる可能性があることから、今回の治験が計画されています。

間葉系幹細胞には脂肪由来幹細胞の他にも骨髄由来間葉系幹細胞や臍帯血由来間葉系幹細胞等もありますが、脂肪由来幹細胞は体内に豊富に存在する脂肪組織に含まれるため量を確保しやすく、採取にあたって侵襲性も低いことから再生医療に用いる細胞として注目されています。

脂肪由来幹細胞を用いる再生医療には、治療を受ける本人の細胞を用いる治療も多く研究、実施されていますが、脂肪を採取してから点滴投与できる細胞数に増やすまでに数週間かかることから、迅速な治療を行う必要がある新型コロナウイルス感染症に対しては予め製造を行うことができる他家脂肪由来幹細胞を用いる必要があり、ロート製薬による治験でも他家細胞を用いた細胞製剤が使用される予定とされています。

治療を受ける本人由来ではない細胞を用いるため、品質の確保の難しさや免疫拒絶の危険性等もあります。
また、脂肪由来幹細胞の静脈点滴投与については、因果関係は不明なものの、脂肪由来幹細胞の点滴を受けた患者が後日死亡した事例もあり、適切に行わなければ健康被害の発生を招くおそれも否定できない治療法となります。
その点、ロート製薬では「ADR-001」を用いた肝硬変に対する治験として、脂肪由来幹細胞の静脈内点滴に対する安全性に関するデータを蓄積してきており、今回の新型コロナウイルス感染症に対する治験につながっています。

今回実施されるのは医薬品医療機器等法に基づく「再生医療等製品」の治験となり、この治験が上手くいったとすると将来的には「再生医療等製品」として承認されて医療機関での治療に使用することができるようになることが期待されます。

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