海外で細胞採取・細胞加工を行う再生医療等で注意すべきこと|医療機関が確認すべき実務ポイント

再生医療等では、患者から採取した脂肪、血液、組織などを用いて、国内または海外の細胞加工施設で特定細胞加工物等を製造し、日本国内の医療機関で投与するスキームが検討されることがあります。

特に、脂肪由来幹細胞治療、免疫細胞療法、海外患者を対象とした治療、医療ツーリズム、海外CPCとの提携などでは、細胞の採取や加工に海外機関が関与するケースがあります。

しかし、海外の医療機関やCPCが関与する場合でも、日本国内で再生医療等を提供する医療機関の責任が軽くなるわけではありません。

再生医療等を患者に提供する主体は、あくまで日本国内の再生医療等提供機関です。

海外で細胞を採取する場合、海外CPCで製造する場合、海外医療機関から細胞や患者を受け入れる場合には、細胞の入手方法、責任分担、緊急時対応、品質管理、記録管理、患者説明、輸送、個人情報管理などを慎重に整理する必要があります。

本記事では、海外で細胞採取・細胞加工を行う再生医療等について、医療機関が確認すべき実務上のポイントを解説します。


1. 海外機関が関与しても、日本の提供計画の範囲を確認する

海外で細胞を採取したり、海外CPCで細胞加工を行ったりする場合でも、日本国内で再生医療等を提供するのであれば、日本の再生医療等安全性確保法に基づく手続きが問題になります。

医療機関は、再生医療等提供計画において、どこで、誰が、どのように細胞を採取し、どの施設で加工し、どのように日本の医療機関へ輸送し、どの医師が投与するのかを整理する必要があります。

特に確認すべき点は、次のとおりです。

・細胞を採取する国、医療機関、医師
・採取する細胞や組織の種類
・採取方法、採取量、麻酔方法
・採取後の保管方法
・海外CPCでの製造工程
・日本への輸送方法
・輸送時の温度管理
・日本の医療機関での受領確認
・投与前の品質確認
・有害事象発生時の連絡体制
・患者への説明内容

海外機関が関与する場合、関係者が増えるため、責任の所在が曖昧になりやすくなります。

「海外の病院が採取する」「海外CPCが製造する」というだけでは不十分です。

日本の医療機関として、再生医療等提供計画の中で、その流れを説明できるようにしておく必要があります。


2. 細胞採取を行う海外医療機関の体制を確認する

海外で細胞採取を行う場合、採取を行う医療機関の体制確認が重要です。

細胞採取は、再生医療等の出発点です。

採取方法や採取時の管理が不適切であれば、その後の細胞加工、品質管理、投与にも影響します。

確認すべき内容としては、次のようなものがあります。

・医療機関の名称、所在地
・管理者または責任者
・採取を行う医師
・採取を行う場所
・採取方法
・採取に用いる器具、資材
・採取時の無菌操作
・採取後の識別管理
・採取後の保管条件
・採取後の輸送条件
・採取時の有害事象対応
・緊急時の連携体制

特に、脂肪採取のように侵襲を伴う処置では、採取時の出血、疼痛、感染、麻酔に伴うリスクなどが考えられます。

そのため、海外の医療機関が、細胞を適切に採取し、保管に必要な管理を行える体制を有しているかを確認する必要があります。

また、採取医師について、略歴、専門性、救急対応経験、再生医療等に関する知識や経験などを委員会から確認される場合もあります。

海外で採取するからといって、採取体制の確認を省略できるわけではありません。


3. 海外CPCを利用する場合は「外国製造施設の認定」を確認する

海外で特定細胞加工物等を製造する場合には、外国における特定細胞加工物等製造施設としての認定が関係します。

日本の制度では、国内の医療機関内で製造する場合、国内の医療機関外で製造する場合、国外で製造する場合で、必要となる手続きが異なります。

海外CPCを利用する場合には、少なくとも次の点を確認する必要があります。

・外国製造施設として認定を受けているか
・認定の対象となる製造内容は何か
・施設番号や認定情報を確認できるか
・製造工程が提供計画と一致しているか
・品質管理試験の内容が明確か
・出荷基準が明確か
・変更が生じた場合の通知体制があるか
・重大事態発生時の報告体制があるか

注意すべきなのは、海外にCPCが存在することと、日本の再生医療等で使用できる施設として認定を受けていることは別であるという点です。

海外CPCを利用する場合には、その施設が日本の制度上どのように位置づけられているのかを確認する必要があります。


4. 製造工程・品質管理試験を日本側でも把握する

海外CPCに製造を委託している場合でも、日本の医療機関は、投与する特定細胞加工物等の製造工程や品質管理試験を把握しておく必要があります。

患者に投与する細胞加工物について説明し、安全性を確認し、疾病等が発生した場合に原因究明を行うのは、日本の医療機関の重要な責任です。

海外CPCに確認すべき項目としては、次のようなものがあります。

・原料となる細胞または組織
・受入れ時の確認方法
・細胞分離方法
・培養工程
・継代数
・培地、試薬、添加物
・凍結保存の有無
・保管条件
・出荷時の細胞数
・生存率
・無菌試験
・マイコプラズマ試験
・エンドトキシン試験
・細胞特性確認
・外観確認
・出荷判定基準
・不合格時の取扱い

海外CPCから提供される資料が英語や現地語の場合、日本の医療機関側で内容を十分に理解できるかも重要です。

単に「CPCから資料をもらっている」というだけでは不十分です。

提供計画、説明同意文書、委員会審査、定期報告、疾病等報告に対応できるように、医療機関側でも内容を確認できる状態にしておく必要があります。


5. 輸送条件と温度管理を具体的に確認する

海外で採取・加工した細胞を日本へ輸送する場合、輸送条件は非常に重要です。

輸送中の温度逸脱、遅延、識別ミス、破損、税関・通関手続きの遅れなどが発生すれば、細胞加工物の品質や投与可否に影響する可能性があります。

確認すべき事項は、次のとおりです。

・輸送経路
・輸送業者
・輸送容器
・温度条件
・温度記録の方法
・輸送時間の上限
・遅延時の対応
・温度逸脱時の判断基準
・受領時の確認方法
・受領後の保管条件
・投与可否判断の責任者
・輸送記録の保存方法

特に、凍結細胞、冷蔵細胞、室温管理の細胞では、必要な輸送条件が異なります。

また、輸送中の温度逸脱があった場合に、その細胞を投与してよいかどうかを誰がどの基準で判断するのかも明確にしておく必要があります。

輸送条件は、CPCや輸送業者任せにせず、提供計画や契約書、手順書に反映することが重要です。


6. 患者説明では、海外機関が関与することを明確にする

海外で細胞採取や細胞加工を行う場合、患者への説明も重要です。

患者は、自分の細胞がどこで採取され、どこで加工され、どのように日本へ運ばれ、どの医療機関で投与されるのかを理解したうえで同意する必要があります。

説明同意文書では、次のような内容を分かりやすく記載することが望ましいです。

・細胞採取を行う医療機関
・細胞採取を行う国、場所
・採取を担当する医師
・細胞加工を行う施設
・細胞加工を行う国
・日本への輸送方法
・輸送中の管理方法
・海外機関が関与することによるリスク
・個人情報や医療情報の共有範囲
・健康被害が生じた場合の対応
・問い合わせ窓口
・同意撤回時の取扱い

特に、海外機関との情報共有がある場合には、個人情報や医療情報がどの範囲で共有されるのかを明確にする必要があります。

患者にとって、海外で細胞が扱われることは重要な判断材料です。

そのため、医療機関側が当然の前提としていることでも、説明同意文書では丁寧に記載する必要があります。


7. 海外機関との契約で責任分担を明確にする

海外医療機関や海外CPCと連携する場合、契約書や覚書で責任分担を明確にしておくことが重要です。

特に、次の点は書面で確認しておくべきです。

・細胞採取の責任者
・採取時の有害事象対応
・採取記録の作成と保存
・細胞の識別管理
・採取後の保管と輸送
・CPCでの製造範囲
・品質管理試験の内容
・出荷基準
・輸送中の逸脱時の対応
・品質不良時の連絡方法
・疾病等発生時の原因究明協力
・記録の開示方法
・個人情報の取扱い
・契約終了時の記録・検体・保管細胞の取扱い
・紛争時の対応

海外機関との契約では、言語、準拠法、管轄、時差、連絡方法なども問題になります。

日本の医療機関が、疾病等報告や不適合対応を行う際に必要な情報を取得できない契約では、実務上大きなリスクになります。

契約書は、費用や業務範囲だけでなく、患者安全と法令対応の観点から確認する必要があります。


8. 緊急時・疾病等発生時の連絡体制を整える

海外機関が関与する再生医療等では、疾病等が発生した場合の連絡体制が複雑になります。

たとえば、日本で投与後に患者が発熱、悪寒、呼吸苦、感染疑い、重篤な体調不良を訴えた場合、医療機関は患者対応を行うと同時に、使用した細胞加工物の製造工程や輸送記録を確認する必要があります。

このとき、海外CPCや海外医療機関と速やかに連絡が取れないと、原因究明が遅れる可能性があります。

確認すべき事項は、次のとおりです。

・緊急時の連絡先
・時差を踏まえた連絡方法
・日本語または英語で対応できる担当者
・品質管理責任者への連絡方法
・製造記録の照会方法
・輸送記録の照会方法
・同一ロット、同一工程の他症例確認
・情報提供の期限
・記録の提出形式

疾病等報告では、症状の発生時期、再生医療等との因果関係、講じた措置、転帰などを整理する必要があります。

海外機関が関与している場合には、事前に連絡体制を整えておかなければ、報告期限内の対応が難しくなる可能性があります。


9. 海外機関任せの患者紹介スキームには注意する

海外機関、紹介会社、コンサルティング会社が患者紹介、対象疾患の選定、投与細胞数の提案、治療スケジュール調整などに関与するスキームでは、特に注意が必要です。

再生医療等では、患者が対象疾患に該当するか、選択基準・除外基準を満たすか、投与が医学的に妥当かを判断するのは、再生医療等を提供する医療機関です。

外部事業者が次のような判断を実質的に行っている場合、医療機関の主体性が疑われる可能性があります。

・対象疾患を決める
・患者の適格性を判断する
・投与細胞数を指定する
・投与方法を指定する
・医師の診察前に治療内容を確定する
・患者説明を外部事業者が主導する
・費用や契約を外部事業者が主導する

外部事業者が患者紹介や事務調整を行うこと自体が直ちに問題になるとは限りません。

しかし、医学的判断や患者への説明、適応判断、投与内容の決定は、医療機関が主体的に行う必要があります。


10. 広告・ウェブサイト表現にも注意する

海外で細胞採取や細胞加工を行う再生医療等では、広告表現にも注意が必要です。

海外の技術、海外CPC、外国人医師、有名クリニック、先進医療的なイメージを強調しすぎると、患者が治療の有効性や安全性を過大に期待する可能性があります。

避けるべき表現としては、次のようなものがあります。

・海外で認められた最先端治療
・世界基準の幹細胞治療
・海外CPCだから高品質
・日本では受けられない特別な再生医療
・世界で効果が証明された治療
・海外医師が推奨する安全な治療

広告では、海外機関が関与することを強調するよりも、治療内容、費用、リスク、効果の限界、自由診療であること、海外での採取・加工・輸送に関する説明を分かりやすく示すことが重要です。

また、再生医療等提供計画の内容、説明同意文書、CPC契約、広告表現が一致しているかも確認する必要があります。


11. 海外スキームの実務チェックリスト

海外で細胞採取・細胞加工を行う再生医療等では、次の項目を確認するとよいです。

細胞採取に関する確認

・採取国、採取医療機関、採取医師を特定しているか
・採取方法、採取量、麻酔方法を確認しているか
・採取時の有害事象対応を確認しているか
・採取後の保管・輸送方法を確認しているか
・採取記録の保存方法を確認しているか

海外CPCに関する確認

・外国製造施設としての認定を確認しているか
・製造工程、品質管理試験、出荷基準を確認しているか
・施設番号、認定情報、製造対象を確認しているか
・変更時の通知体制を確認しているか
・重大事態発生時の対応を確認しているか

輸送・受領に関する確認

・輸送条件、温度管理、輸送時間を確認しているか
・温度逸脱時の対応を決めているか
・日本側での受領確認方法を決めているか
・投与可否判断の責任者を決めているか
・輸送記録を保存しているか

患者説明に関する確認

・海外で採取・加工されることを説明しているか
・個人情報の海外共有について説明しているか
・健康被害発生時の対応を説明しているか
・同意撤回時の取扱いを説明しているか
・海外機関が関与するリスクを説明しているか

契約・責任分担に関する確認

・海外医療機関、CPCとの契約書があるか
・責任分担が明確か
・疾病等発生時の記録開示が可能か
・契約終了後も必要な情報を照会できるか
・患者情報の取扱いが明確か

医療機関の主体性に関する確認

・対象疾患の判断を医療機関が行っているか
・選択基準、除外基準の確認を医療機関が行っているか
・投与細胞数や投与方法を医師が判断しているか
・外部事業者が医学的判断を代替していないか
・診療録や症例一覧に判断過程を記録しているか


まとめ

海外で細胞採取・細胞加工を行う再生医療等では、国内完結型の治療以上に慎重な体制整備が必要です。

特に注意すべきポイントは、次のとおりです。

・海外機関が関与しても、日本国内で提供する医療機関の責任は軽くならない
・海外で細胞採取を行う場合、採取医療機関、採取医師、採取方法、緊急時対応を確認する
・海外CPCを利用する場合、外国製造施設としての認定や製造内容を確認する
・製造工程、品質管理試験、出荷基準を日本側でも把握する
・輸送条件、温度管理、逸脱時対応を具体的に決める
・患者には、海外で採取・加工されること、個人情報共有、健康被害時対応を明確に説明する
・海外機関との契約で、責任分担、記録開示、疾病等発生時の協力体制を定める
・外部事業者が患者適格性や投与内容を実質的に決めるスキームは避ける
・広告では、海外技術や最先端性を過度に強調せず、治療内容、費用、リスクを正確に示す

海外機関との連携は、再生医療等の選択肢を広げる可能性があります。

しかし、細胞採取、製造、輸送、投与、患者説明、緊急時対応、記録管理のどこかが曖昧になると、医療機関にとって大きな法令上・運用上のリスクになります。

林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成だけでなく、海外での細胞採取体制の整理、海外CPCとの製造委託スキームの確認、説明同意文書の整備、契約書・覚書の確認、委員会対応、変更届、定期報告、疾病等報告まで、再生医療等の導入と運用をサポートしています。

海外医療機関や海外CPCが関与する再生医療等の提供をご検討中の医療機関様は、まずはお気軽にご相談ください。

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