再生医療等提供計画の「対象疾患・選択基準・除外基準」で注意すべきこと|委員会審査で止まりやすい実務ポイント

林医療福祉行政書士事務所

再生医療等提供計画を作成する際、委員会審査で特に重要になるのが、「対象疾患」「選択基準」「除外基準」です。

PRP療法、脂肪由来幹細胞治療、線維芽細胞治療、免疫細胞療法などでは、治療内容や製造方法に注目が集まりがちですが、実務上は「どの患者に提供するのか」が曖昧なまま計画を作成してしまい、委員会審査で指摘を受けるケースが少なくありません。

再生医療等提供計画では、再生医療等の内容として、対象疾患等や、再生医療等を受ける者の主な選択基準・除外基準を記載することが求められています。さらに、治療として再生医療等を実施する場合には、その有効性が安全性におけるリスクを上回ることについて、科学的根拠を示す必要があります。 

つまり、対象疾患や患者基準は、単なる形式的な記載事項ではありません。

本記事では、再生医療等提供計画における対象疾患・選択基準・除外基準について、医療機関が実務上注意すべきポイントを解説します。


1. 対象疾患は「広く書けばよい」わけではない

再生医療等提供計画では、対象疾患を広く設定したくなることがあります。

たとえば、次のような表現です。

・慢性疼痛
・関節疾患
・変形性関節症全般
・神経疾患
・生活習慣病
・加齢に伴う不調
・アンチエイジング
・疲労回復
・全身状態の改善

一見すると、幅広い患者に対応できるため便利に見えます。

しかし、対象疾患を広げるほど、疾患ごとに科学的妥当性、安全性、評価方法、除外基準を説明する必要があります。

たとえば、「関節疾患」といっても、膝関節、股関節、肩関節、足関節、手指関節では、解剖学的特徴、病態、既存治療、評価指標、臨床文献の蓄積が異なります。

「慢性疼痛」も同様です。

変形性関節症による疼痛、神経障害性疼痛、線維筋痛症、術後疼痛、内臓性疼痛では、原因も治療目標も評価方法も異なります。

再生医療等の治療計画では、対象疾患ごとに、期待される利益と不利益を検討し、有効性が安全性上のリスクを上回ることを説明する必要があります。認定再生医療等委員会も、治療としての再生医療等について、有効性が安全性におけるリスクを上回ることが十分予測されるかを確認することとされています。 

そのため、対象疾患は「できるだけ広く」ではなく、「根拠を示せる範囲で具体的に」設定することが重要です。


2. 疾患名は、患者にも委員会にも伝わる表現にする

対象疾患の記載では、曖昧な表現を避ける必要があります。

たとえば、「膝の痛み」「関節の不調」「老化による症状」「体調改善」などの表現は、患者向けには分かりやすい一方で、提供計画上の対象疾患としては不明確です。

提供計画では、医学的に特定できる疾患名を基本にしつつ、患者向け説明では平易な表現に置き換えるのがよいです。

たとえば、次のような整理です。

・変形性膝関節症
・変形性股関節症
・肩関節周囲炎
・腱付着部炎
・皮膚萎縮、瘢痕、しわ等の皮膚症状
・アルツハイマー病
・パーキンソン病
・慢性疼痛のうち、原因疾患や疼痛部位を特定したもの

医療機関が実際に行う治療内容と、対象疾患名が一致していないと、科学的妥当性の検討や説明同意文書にも影響します。

また、広告やホームページで対象を広く見せすぎると、提供計画の範囲を超えた集患につながるおそれがあります。

対象疾患は、提供計画、説明同意文書、ホームページ、院内資料、症例一覧で一貫させることが重要です。


3. 選択基準は「医師が必要と判断した患者」だけでは不十分

選択基準でよく見られる不十分な記載が、「医師が必要と判断した患者」「本人が希望した患者」「標準治療で十分な効果が得られない患者」といった表現です。

もちろん、最終的な適応判断は医師が行います。

しかし、それだけでは、どのような患者を対象にするのかが客観的に分かりません。

選択基準では、少なくとも次のような要素を検討します。

・診断名
・年齢
・症状の程度
・罹病期間
・重症度分類
・既存治療の実施状況
・既存治療で十分な効果が得られていないこと
・検査所見
・画像所見
・全身状態
・本人の同意能力
・治療後のフォローアップが可能であること

たとえば、変形性膝関節症に対するPRP関節内投与であれば、単に「膝痛を有する患者」ではなく、変形性膝関節症と診断され、保存療法で十分な改善が得られず、医師が適応を認めた患者、といった整理が考えられます。

脂肪由来幹細胞治療であれば、対象疾患、重症度、既存治療、投与方法、投与細胞数に応じて、より慎重に選択基準を設計する必要があります。

選択基準は、委員会のためだけでなく、医療機関が実際に患者を選定するための判断基準です。

現場で使える具体性が必要です。


4. 除外基準は、安全性のために具体的に書く

除外基準は、再生医療等を安全に提供するために重要です。

よくある不十分な記載として、次のようなものがあります。

・重篤な疾患を有する者
・医師が不適切と判断した者
・全身状態が不良な者
・感染症を有する者
・妊娠中の者

これらの記載自体は必要な場合がありますが、これだけでは不十分です。

除外基準では、治療内容に応じて、具体的なリスクを想定する必要があります。

たとえば、以下のような項目を検討します。

・活動性の感染症を有する患者
・悪性腫瘍を有する、または治療中の患者
・重度の心疾患、肝疾患、腎疾患、呼吸器疾患を有する患者
・出血傾向を有する患者
・抗凝固薬、抗血小板薬の使用状況によりリスクが高い患者
・免疫抑制状態にある患者
・妊娠中または妊娠の可能性がある患者
・授乳中の患者
・採血、脂肪採取、局所注射、静脈投与に耐えられない患者
・治療後のフォローアップが困難な患者
・説明を理解し、同意することが困難な患者

PRP療法であれば、血小板数、抗凝固薬の使用、感染、注射部位の状態などが問題になります。

脂肪由来幹細胞治療であれば、脂肪採取に伴うリスク、麻酔のリスク、培養細胞の投与リスク、静脈投与の場合の全身リスクなどを考慮する必要があります。

除外基準は、患者を排除するためのものではありません。

リスクの高い患者に不適切に治療を提供しないための安全管理です。


5. 「医師の判断」は残してよいが、単独の基準にしない

実務上、すべての患者を機械的な基準だけで判断することはできません。

そのため、選択基準や除外基準の最後に、「その他、医師が本治療の実施を不適当と判断した者」などの包括的な記載を置くことはあります。

しかし、これを中心にしてしまうと、基準としての意味が弱くなります。

たとえば、次のような記載だけでは不十分です。

・医師が適当と判断した者を対象とする
・医師が不適当と判断した者を除外する

これでは、委員会が安全性や妥当性を評価しにくくなります。

望ましいのは、具体的な基準を列挙したうえで、最後に補充的に医師判断を置く形です。

たとえば、選択基準では、診断名、重症度、既存治療、年齢、同意能力などを記載し、そのうえで「上記を満たし、医師が本治療の実施を適当と判断した者」と整理します。

除外基準でも、感染症、悪性腫瘍、重度臓器障害、妊娠、出血リスクなどを具体的に記載したうえで、「その他、医師が本治療の実施を不適当と判断した者」を置く形が考えられます。

医師判断は必要ですが、医師判断だけに依存しない設計が重要です。


6. 選択基準・除外基準は、説明同意文書にも反映させる

選択基準・除外基準は、提供計画だけに記載すればよいものではありません。

患者に対しても、どのような人が治療対象となり、どのような場合に治療を受けられない可能性があるのかを説明する必要があります。

説明同意文書では、再生医療等の目的・内容、用いる細胞に関する情報、予期される利益および不利益などを、できる限り平易な表現で説明する必要があります。 

たとえば、患者向けには次のような表現が考えられます。

・診察や検査の結果によっては、本治療を受けられない場合があります。
・感染症、重い全身疾患、出血しやすい状態、妊娠中などの場合には、安全性の観点から治療を行わないことがあります。
・本治療の適応は、医師が診察、検査結果、既往歴、現在の治療内容等を確認したうえで判断します。
・患者様が希望される場合でも、医師が適切でないと判断した場合には実施できません。

このような記載を入れておくことで、患者が「希望すれば必ず受けられる治療」と誤解することを防ぎやすくなります。


7. 対象疾患と評価方法はセットで考える

対象疾患を決める際には、評価方法も同時に考える必要があります。

なぜなら、定期報告では、安全性だけでなく科学的妥当性についても評価する必要があるためです。

提供計画の記載要領でも、提供する再生医療等の利益・不利益について検討の概要を記載することに加え、定期報告時に科学的妥当性を評価するための評価方法についても記載することが示されています。 

たとえば、関節疾患であれば、次のような評価指標が考えられます。

・VAS
・NRS
・KOOS
・JOAスコア
・可動域
・画像所見
・鎮痛薬の使用状況
・患者満足度

皮膚再生領域であれば、写真評価、医師評価、患者満足度、皮膚状態スコアなどが考えられます。

神経疾患や慢性疼痛では、疾患ごとに適切な評価指標を設定する必要があります。

対象疾患を広く設定しすぎると、評価指標も広がり、定期報告時に科学的妥当性を評価しにくくなります。

対象疾患、選択基準、評価方法は一体で設計することが重要です。


8. 対象疾患を追加する場合は、変更届が必要になる

治療開始後に、「この疾患にも使いたい」「この部位にも投与したい」といった相談が出ることがあります。

しかし、対象疾患や投与部位の追加は、単なる運用変更では済みません。

再生医療等提供計画の内容を変更する場合には、原則として、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、あらかじめ変更届を提出する必要があります。 

対象疾患を追加する場合には、少なくとも次の点を確認する必要があります。

・追加する疾患に科学的根拠があるか
・既存の投与方法で妥当性を説明できるか
・選択基準、除外基準を変更する必要があるか
・評価指標を追加する必要があるか
・説明同意文書を変更する必要があるか
・広告やホームページの記載を変更する必要があるか
・CPCの製造内容や品質管理に影響があるか

「同じ細胞を使うから同じ計画でよい」とは限りません。

疾患が変われば、期待される効果、リスク、評価方法、説明内容も変わる可能性があります。


9. 選択基準・除外基準の不遵守は重大な不適合になり得る

選択基準・除外基準は、計画作成時だけでなく、治療開始後の運用でも重要です。

厚生労働省は、重大な不適合について、再生医療等を受ける者の人権や安全性、または結果の信頼性に影響を及ぼすものをいい、その例として選択・除外基準や中止基準、併用禁止療法等の不遵守を挙げています。 

つまり、選択基準を満たさない患者や、除外基準に該当する患者に再生医療等を提供した場合、重大な不適合として扱うべき可能性があります。

たとえば、次のようなケースです。

・対象疾患ではない患者に投与した
・年齢基準を満たさない患者に投与した
・除外基準に該当する感染症や重篤な合併症があった
・必要な検査を行わずに適応ありと判断した
・禁忌または慎重投与に該当する併用治療を見落とした
・フォローアップ不能な患者に実施した

このような不適合を防ぐためには、治療前チェックリストを用意し、医師だけでなく看護師や事務担当者も確認できる運用にすることが有効です。


10. 実務上のチェックリスト

対象疾患・選択基準・除外基準を作成する際には、次の項目を確認するとよいです。

対象疾患の確認

・疾患名が具体的か
・患者向け表現と医学的表現を区別しているか
・対象疾患ごとに科学的根拠を示せるか
・文献の対象疾患と提供計画の対象疾患が一致しているか
・投与方法と対象疾患の関係を説明できるか
・広告やホームページで対象を広げすぎていないか

選択基準の確認

・診断名が明確か
・年齢基準が明確か
・重症度や症状の程度を示しているか
・既存治療との関係を整理しているか
・検査所見や画像所見の要否を整理しているか
・本人の同意能力を確認しているか
・フォローアップ可能性を確認しているか

除外基準の確認

・感染症を考慮しているか
・悪性腫瘍を考慮しているか
・重度の心疾患、肝疾患、腎疾患、呼吸器疾患を考慮しているか
・出血リスクを考慮しているか
・妊娠、授乳を考慮しているか
・免疫抑制状態を考慮しているか
・採血、脂肪採取、投与に伴うリスクを考慮しているか
・治療後のフォローアップが困難な患者を除外しているか

運用上の確認

・治療前チェックリストを作成しているか
・説明同意文書に反映しているか
・症例一覧で対象疾患と基準適合性を記録しているか
・基準外の患者に実施しない運用になっているか
・対象疾患を追加する場合の変更手続きフローがあるか


まとめ

再生医療等提供計画における対象疾患・選択基準・除外基準で注意すべきポイントは、次のとおりです。

・対象疾患は広く書きすぎず、根拠を示せる範囲で具体化する
・医学的な疾患名と患者向けの平易な説明を使い分ける
・選択基準は「医師が必要と判断した患者」だけでなく、診断名、重症度、既存治療、検査所見などを具体的に整理する
・除外基準は、安全性の観点から具体的に記載する
・医師判断は必要だが、単独の基準にしない
・説明同意文書にも、治療対象となる患者や受けられない場合があることを反映する
・対象疾患と評価方法はセットで設計する
・対象疾患を追加する場合は、変更届の要否を確認する
・選択基準・除外基準の不遵守は、重大な不適合になり得る

対象疾患・選択基準・除外基準は、再生医療等提供計画の中でも、科学的妥当性、安全性、患者説明、定期報告、不適合対応のすべてに関わる重要な項目です。

林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成だけでなく、対象疾患の整理、選択基準・除外基準の作成、科学的妥当性の検討、説明同意文書の整備、委員会指摘への対応、変更届、定期報告まで、再生医療等の導入と運用をサポートしています。

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