本稿では、脂肪幹細胞を用いた再生医療等について紹介させていただきます。
脂肪幹細胞とは脂肪組織から分離することができる成体幹細胞であり、以下のような理由で再生医療等への応用が強く期待されています。
- 元となる脂肪組織を簡便かつ低侵襲な手法で大量に採取できる。
- 中胚葉由来の組織をはじめとして、多様な組織、細胞に分化することができる。
- 比較的長期間にわたって安定して培養できる。
脂肪幹細胞は、皮下脂肪の塊や脂肪吸引を行った脂肪組織から分離することができることから、簡便かつ低侵襲な手法で大量に採取することができます。
また、脂肪幹細胞は高い分化能を持ち、中胚葉由来の脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、骨格筋、血球などの多様な細胞に分化することができます。さらに、脂肪幹細胞自体が中胚葉由来の細胞であるのにも関わらず、中胚葉以外の系列にも分化する能力を持ち、神経細胞、網膜色素上皮細胞、肝細胞、膵細胞などにも分化できることが示されています。
実際に、脂肪幹細胞を用いた再生医療等に関する研究も活発に行われており、臨床試験の段階まで進んでいる研究や実用化されようとしている研究も存在します。
現在、研究が進められている脂肪幹細胞を用いた再生医療等としては以下のような例があります。
- 豊胸手術や脂肪萎縮症等の治療のための脂肪移植
- 痔瘻の治療
- 移植片対宿主病の治療
- 糖尿病の治療
- 骨の再生
- 自己免疫疾患の治療
なお、脂肪幹細胞を用いたこれらの再生医療等はほとんどが第2種再生医療等技術に該当します(一部第3種に該当するものもあります)。