再生医療等を実施しようとする医療機関の管理者は、あらかじめ、再生医療等技術の区分ごとに再生医療等提供計画を作成し、厚生労働大臣(又は地方厚生局長)に提出することが義務付けられています。
再生医療等提供計画は、厚生労働省令により定められた「再生医療等提供基準」に適合している必要があります。
なお、再生医療等提供計画を提出しようとする際は、提出前に認定再生医療等委員会による審査を受け、委員会による意見を計画に添付する必要があります。
認定再生医療等委員会による審査は、計画が「再生医療等提供基準」に適合しているか否かを基準として行われます。
再生医療等は、リスクや新規性に応じて第1種~第3種の三つに分類され、分類ごとに計画提出の手続にも差異があります。
本稿では、「再生医療等提供基準」について解説させていただきます。
再生医療等を提供しようとする医療機関の管理者は、「再生医療等提供基準」に従って再生医療等提供計画を作成して厚生労働大臣(又は地方厚生局長)に提出することが義務付けられています(2015年11月24日までは経過措置により計画提出していなくても再生医療等を提供することが可能です)。
また、計画提出後も再生医療等提供基準に従って再生医療等を提供する必要があります。
再生医療等提供基準の全文についてはこちらからご覧ください。
再生医療等提供基準では以下の事項について基準が定められています。
- 人員
- 構造設備その他の施設
- 細胞の入手
- 特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法
- 再生医療等を行う医師又は歯科医師の要件
- 再生医療等を行う際の責務
- 再生医療等を行う際の環境への配慮
- 再生医療等を受ける者の選定
- 再生医療等を受ける者に対する説明及び同意
- 再生医療等を受ける者の代諾者の同意
- 細胞の安全性に関する疑義が生じた場合の措置
- 試料の保管
- 疾病等の発生の場合の措置
- 再生医療等の提供終了後の措置
- 再生医療等の提供を受ける者に関する情報の把握
- 実施状況の確認
- 再生医療等を受ける者に対する健康被害の補償を行う場合
- 細胞提供者等に対する補償
- 細胞提供者等に関する個人情報の取扱い
- 個人情報の保護
- 教育又は研修
- 苦情及び問合せへの対応
この中で特に重要であると思われるのが(6)再生医療等を行う際の責務(施行規則第10条)です。
(再生医療等を行う際の責務)
第十条 医師又は歯科医師は、再生医療等を行う際には、その安全性及び妥当性について、科学的文献その他の関連する情報又は十分な実験の結果に基づき、倫理的及び科学的観点から十分検討しなければならない。
2 医師又は歯科医師は、再生医療等に特定細胞加工物を用いる場合においては、特定細胞加工物製造事業者に特定細胞加工物の製造を行わせる際に、特定細胞加工物概要書に従った製造が行われるよう、必要な指示をしなければならない。
3 医師又は歯科医師は、再生医療等に特定細胞加工物を用いる場合においては、再生医療等を受ける者に対し、特定細胞加工物の投与を行う際に、当該特定細胞加工物が特定細胞加工物概要書に従って製造されたものか確認する等により、当該特定細胞加工物の投与の可否について決定しなければならない。
特に第1項(太字部分)は認定再生医療等委員会による審査でも提供の適否の重要な判断材料になると思われます。
「科学的文献その他の関連する情報」としては、例えば、研究論文や学術集会の発表が挙げられます。
「十分な実験の結果」としては、例えば、投与される細胞加工物の非臨床試験等が挙げられ、当該細胞加工物の安全性や妥当性について、その時点での科学的水準に基づき可能な範囲で検討されていることが求められます。
また、培養した幹細胞又は当該細胞に培養その他の加工を施したものを用いる再生医療等であって、前例のないものを提供する場合は、造腫瘍性の評価を含む安全性に対する配慮が必要となります。
そして、検討を行った結果、十分な「安全性」と「妥当性」=「当該再生医療等の提供による利益が不利益を上回ることが十分予測されること」を備えていることが求められます。