再生医療等の定期報告は2種類|PRPの院内調製で見落としやすい製造状況60日・提供状況90日の違い

再生医療等を提供している医療機関には、毎年、再生医療等の提供状況について定期報告を行う義務があります。

しかし、PRP療法などで院内に細胞培養加工施設(CPC)を設け、特定細胞加工物を製造している場合には、もう一つ忘れてはいけない定期報告があります。

それが「特定細胞加工物等製造状況定期報告」です。

再生医療等の提供状況定期報告は、再生医療等提供計画を提出した日から起算して1年ごとに、報告期間満了後90日以内に行う手続きです。一方、特定細胞加工物等の製造状況定期報告は、製造施設の届出受理日等を基準として1年ごとに、報告期間満了後60日以内に行う必要があります。

つまり、同じ医療機関が関係する定期報告であっても、報告対象、起算日、期限、提出書類が異なります。

特に注意が必要なのは、PRPの院内調製を行っている医療機関です。再生医療等提供計画に関する定期報告だけを行い、細胞加工施設としての定期報告を忘れてしまうことがないよう、両方の手続きを管理する必要があります。

本記事では、2種類の定期報告の違いと、実務上の注意点を厚生労働省の一次資料に基づいて解説します。


1.院内でPRPを調製する場合は、2つの立場で手続きが必要

再生医療等安全性確保法の対象となるPRP療法を院内で実施する場合、医療機関は、再生医療等を患者に提供する立場と、特定細胞加工物を製造する立場を兼ねることがあります。

例えば、整形外科クリニックで患者から採血し、院内の遠心分離機を使用してPRPを調製した後、患者の関節内に投与する場合です。

この場合、再生医療等提供機関としての手続きに加え、院内で特定細胞加工物を製造する施設としての届出が必要となります。

そして、治療開始後も、それぞれの立場に応じた定期報告を継続する必要があります。

一方、外部CPCに特定細胞加工物の製造を委託している医療機関では、製造状況の定期報告は原則として製造事業者側の義務となり、医療機関は再生医療等提供機関として提供状況の定期報告を行います。

そのため、まずは自院がどのような立場で再生医療等に関与しているかを確認することが重要です。


2.2種類の定期報告は何が違うのか

2種類の定期報告の主な違いは、次のとおりです。

比較項目製造状況定期報告提供状況定期報告
報告主体特定細胞加工物等製造事業者再生医療等提供機関の管理者
管理単位製造施設再生医療等提供計画
主な報告内容製造件数、提供件数、苦情、疾病等に関する情報実施状況、安全性、科学的妥当性等
起算日製造施設の届出受理日・許可日・認定日再生医療等提供計画の提出日
報告周期1年ごと1年ごと
報告期限期間満了後60日以内期間満了後90日以内
使用様式別紙様式第8別紙様式第3・第4
委員会の意見定期報告に先立つ委員会審査は不要委員会への報告と意見の取得が必要

製造状況定期報告は、再生医療等安全性確保法第46条および施行規則第112条に基づくものです。

一方、提供状況定期報告は、同法第20条・第21条などに基づくものです。

このように、両者は同じ「定期報告」という名称であっても、法律上は異なる義務として定められています。


3.製造状況定期報告は「60日以内」

特定細胞加工物等製造状況定期報告は、製造施設の届出受理日、許可日または認定日から起算して1年ごとに、報告期間満了後60日以内に行う必要があります。

医療機関内の製造施設であれば、通常は特定細胞加工物等製造届書が受理された日が起算日となります。

ここで注意すべきなのは、実際にPRP療法を開始した日や、初めて患者へ投与した日が起算日になるわけではないという点です。

また、製造施設の定期報告は、施設としての製造状況を報告する手続きです。そのため、複数の再生医療等提供計画に使用する特定細胞加工物を同じ施設で製造している場合には、それぞれの提供計画に関する製造状況を整理する必要があります。

令和7年10月17日の厚生労働省記載要領では、特定細胞加工物等および提供先の再生医療等提供機関ごとに報告欄を設けること、同じ医療機関に提供する場合でも、異なる再生医療等提供計画に使用するものについては計画番号を付記し、分けて記載することが示されています。

したがって、1つの製造施設で複数の提供計画に対応している場合には、製造施設全体の件数だけでなく、提供計画ごとの内訳を把握できる記録管理が重要になります。


4.提供状況定期報告は「90日以内」

一方、再生医療等提供状況定期報告は、再生医療等提供計画を提出した日から起算して1年ごとに、報告期間満了後90日以内に行う必要があります。

製造状況定期報告との大きな違いは、認定再生医療等委員会への報告が必要であることです。

医療機関は、報告期間中の実施状況、安全性、科学的妥当性、不適合の発生状況などを整理し、委員会へ報告します。その後、委員会の意見を踏まえて、厚生労働大臣または所管の地方厚生局長へ定期報告を提出します。

このため、90日という期限の中で、症例データの整理、定期報告書の作成、委員会への提出、委員会の審査・確認、厚生局への提出までを進める必要があります。

特に、第2種再生医療等では、委員会の日程や提出期限が決められている場合があります。報告期限の直前になって資料を準備すると、委員会の審査日程に間に合わない可能性があるため、早めに準備することが重要です。


5.「60日以内」と「90日以内」だけで提出順序は判断できない

実務上、特に注意したいのが報告期限の管理です。

製造状況定期報告は60日以内、提供状況定期報告は90日以内ですが、両者は起算日が異なります。

例えば、院内CPCの製造届が先に受理され、その数か月後に再生医療等提供計画を提出した場合には、製造状況定期報告の対象期間と提供状況定期報告の対象期間は一致しません。

逆に、施設と提供計画の手続きの経緯によっては、報告対象期間が近接する場合もあります。

つまり、「製造状況定期報告は60日だから、必ず提供状況定期報告より先に提出する」と機械的に判断することはできません。

それぞれの届出受理日・許可日・認定日・提供計画提出日を確認し、報告対象期間と提出期限を個別に計算する必要があります。

なお、製造施設の変更届や再生医療等提供計画の変更届を提出した場合でも、通常、それだけで定期報告の起算日が新しくなるわけではありません。初回の届出・許可・認定や提供計画の提出日を基準に管理することが重要です。


6.「製造件数」と「投与件数」は同じではない

2種類の定期報告では、報告する件数の考え方も異なります。

製造状況定期報告では、特定細胞加工物等の製造件数と、再生医療等提供機関へ提供した件数を報告します。

一方、提供状況定期報告では、再生医療等を受けた患者数や実際の投与件数などを整理します。

例えば、脂肪由来幹細胞を製造し、凍結保存した上で複数回の投与に使用する場合、細胞加工物の製造件数、医療機関への提供件数、患者への投与件数が必ずしも一致するとは限りません。

令和7年10月17日の製造状況定期報告書の記載要領では、投与予定日が複数ある特定細胞加工物等について、医療機関へまとめて1回で提供した場合は提供件数を1件とし、複数日に分けて提供した場合は、それぞれの提供件数として数えることが示されています。

また、製造後に保管している状態で、医療機関への提供が完了していないものについては、製造件数には含めますが、提供件数には含めません。

このように、製造、医療機関への提供、患者への投与は別の工程です。

そのため、CPCの製造記録と医療機関の投与記録を混同せず、それぞれ正確に管理する必要があります。


7.製造実績が0件でも定期報告は必要

製造状況定期報告で見落としやすいのが、製造実績がない場合の取扱いです。

厚生労働省の令和7年10月17日付記載要領では、報告対象期間中に製造実績がない場合であっても、製造状況定期報告書を提出する必要があることが明記されています。

この場合、製造件数欄には「0件」と記載します。

また、報告対象期間中に苦情が発生していなければ、苦情の処理状況については「なし」と記載します。提供先の医療機関から疾病等の発生に関する通知を受けていない場合には、該当する欄に「該当なし」と記載します。

ここで重要なのは、すべての欄を一律に「該当なし」とするのではなく、記載要領に沿って区別することです。

同様に、再生医療等提供状況定期報告についても、報告対象期間中に実施症例が0件であっても報告が必要です。

ただし、提供状況定期報告では、実施症例が0件の場合、実際の症例に基づく安全性や科学的妥当性の評価については「該当なし」と記載する運用になります。

「製造実績0件」と「提供実績0件」は、それぞれの報告書で適切に処理する必要があります。


8.製造状況定期報告では、苦情や疾病等の情報も報告する

製造状況定期報告は、製造件数だけを報告するものではありません。

再生医療等安全性確保法第46条および施行規則第112条では、製造件数に加え、苦情の処理状況や、提供先の医療機関から通知を受けた疾病等の発生に関する情報について報告することが求められています。

特に、令和7年10月17日の記載要領では、苦情について、発生件数、内容、苦情を受けた年月日、講じた措置などを具体的に記載することが示されています。

また、提供先の医療機関から疾病等の発生について通知を受けた場合には、その内容や医療機関側の措置、製造事業者が行った調査・対応などを整理する必要があります。

これは、外部CPCだけでなく、院内CPCを運用している医療機関にとっても重要です。

患者に投与した後に健康被害が疑われる事象が発生した場合、医療機関として疾病等報告の要否を確認するだけでなく、製造施設側での原因究明や記録管理も必要になる場合があります。

製造状況定期報告は、単なる件数の集計ではなく、製造施設としての品質管理や安全管理の状況を確認する手続きでもあります。


9.院内PRPの定期報告では、何を準備しておくとよいか

院内でPRPを調製している医療機関では、製造施設としての記録と、治療を提供する医療機関としての記録を分けて整理しておくと、定期報告時の負担を軽減できます。

例えば、製造施設側では、PRPの調製日、製造件数、製造記録、使用したキット、識別情報、提供先の計画、苦情の有無などを管理します。

一方、医療機関側では、患者数、投与日、投与部位、投与回数、治療前後の評価、疾病等・不適合の有無などを管理します。

PRPを院内で調製してすぐに投与する場合、製造と投与が同日に行われることもありますが、それでも製造施設としての報告と再生医療等提供機関としての報告は別のものです。

そのため、日々の運用では、同じ症例番号や製造番号などを使って相互に照合できる形にしておくと、製造記録と投与記録の整合性を確認しやすくなります。

なお、これは厚生労働省が全国一律の管理表を指定しているという意味ではありません。医療機関が定期報告を正確に作成するための実務上の管理方法です。


10.定期報告の期限管理は「施設番号」と「計画番号」を分ける

複数の提供計画を運用している医療機関では、定期報告の管理表を作成することをおすすめします。

特に重要なのは、製造施設番号と再生医療等提供計画番号を区別することです。

製造施設番号は、特定細胞加工物等製造施設を識別する番号です。一方、再生医療等提供計画番号は、医療機関が提出した再生医療等提供計画を識別する番号です。

それぞれの番号に対して、起算日、報告対象期間、提出期限、提出状況を整理します。

当事務所では、定期報告の準備に当たり、まず各計画・各製造施設の登録情報から報告期間を確認し、必要な手続きを時系列で整理することを重視しています。

特に、院内CPCを設けている医療機関では、製造状況定期報告が先に必要になる場合があります。

一方で、提供状況定期報告には委員会の確認期間も必要となるため、提出期限だけでなく、委員会への資料提出日も把握しておくことが重要です。


11.令和7年10月17日の記載要領も確認しておく

2025年10月17日、厚生労働省は「再生医療等提供状況定期報告書等の記載要領について」を発出しました。

この記載要領では、再生医療等提供状況定期報告書と、特定細胞加工物等製造状況定期報告書のそれぞれについて、具体的な記載方法が示されています。

特に製造状況定期報告では、製造件数と提供件数の区別、製造実績0件の場合の取扱い、複数の提供計画がある場合の記載方法、苦情や疾病等の情報の整理方法などが示されています。

過去の定期報告書をそのままコピーして使用している医療機関では、現在の様式や記載要領に適合しているか確認することをおすすめします。

また、報告に使用する件数については、実際の製造記録や診療記録と一致している必要があります。前年の報告書の数字だけを確認するのではなく、報告対象期間中の実際の記録に基づいて集計することが重要です。


まとめ

再生医療等の定期報告には、再生医療等提供機関として行う「提供状況定期報告」と、特定細胞加工物等製造事業者として行う「製造状況定期報告」があります。

特に、院内でPRPを調製する医療機関では、両方の定期報告が必要となることに注意が必要です。

製造状況定期報告は、製造施設の届出受理日・許可日・認定日から起算して1年ごとに、報告期間満了後60日以内に行います。

一方、提供状況定期報告は、再生医療等提供計画の提出日から起算して1年ごとに、報告期間満了後90日以内に行います。

また、製造件数と投与件数は必ずしも一致せず、それぞれの報告に使用する記録も異なります。

製造実績や提供実績が0件の場合でも定期報告は必要であり、報告内容に応じて「0件」「なし」「該当なし」などを適切に使い分ける必要があります。

定期報告の漏れを防ぐためには、施設番号と提供計画番号を分けて管理し、それぞれの報告対象期間と提出期限を明確にしておくことが重要です。

林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供状況定期報告だけでなく、特定細胞加工物等製造状況定期報告についても、報告期間の確認、必要資料の整理、報告書の作成、地方厚生局への提出手続きまでサポートしています。

「PRPを院内で調製しているが、製造状況定期報告を行っているか分からない」「提供状況定期報告と製造状況定期報告の期限を整理したい」という医療機関様は、お気軽にご相談ください。


出典・一次資料

厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」

参照箇所:「3.定期報告」。提供状況定期報告の報告事項および90日以内の報告期限について。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/plan.html

厚生労働省「特定細胞加工物等製造施設について(概要)」

参照箇所:「6.定期報告」。製造状況定期報告の対象、報告事項および60日以内の報告期限について。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/manufacturiungfacility.html

厚生労働省「再生医療等提供状況定期報告書等の記載要領について」

令和7年10月17日付事務連絡。

参照箇所:別紙2「再生医療等提供状況定期報告書(別紙様式第3及び第4)の記載要領等について」、別紙4「特定細胞加工物等製造状況定期報告書(別紙様式第8)の記載要領等について」。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001581556.pdf

近畿厚生局「特定細胞加工物の製造に係る手続について」

参照箇所:「定期報告(法第46条、施行規則第112条)」。製造実績の有無にかかわらず毎年報告が必要であること、報告期間、期限、様式の案内。

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iji/saisei/saisei_top_00006.html

東海北陸厚生局「再生医療等安全性確保法についてよくあるご質問」

参照箇所:特定細胞加工物製造事業者の定期報告に関するQ&A。製造実績0件の場合の報告や、複数の提供計画がある場合の記載方法について。

https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/iji/saiseiiryou_yokuarusitumon.html

厚生労働省「e-再生医療」

再生医療等提供計画および特定細胞加工物等製造施設に関する申請・報告様式を作成・提出する公式サイト。

https://saiseiiryo.mhlw.go.jp

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