
再生医療等は、提供計画を提出して治療を開始した後も、計画どおりに運用し続けることが重要です。
PRP療法、脂肪由来幹細胞治療、線維芽細胞治療、免疫細胞療法などでは、開始後にさまざまな変更が生じることがあります。
たとえば、実施医師の追加、説明同意文書の修正、費用の変更、投与方法の変更、CPCの製造工程の変更、品質管理試験の変更などです。
このような変更が生じた場合、医療機関は「変更届」または「軽微変更届」が必要になるかを確認しなければなりません。
再生医療等提供計画を変更する場合には、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、あらかじめ提出が必要な変更事項と、変更から10日以内に届出が必要な軽微な変更事項があります。
本記事では、再生医療等提供計画の変更届・軽微変更届について、医療機関が実務上注意すべきポイントを解説します。
1. 変更には「事前に必要な変更」と「事後に届け出る軽微変更」がある
再生医療等提供計画の変更は、大きく2つに分かれます。
1つ目は、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで、あらかじめ厚生労働大臣または地方厚生局長に提出しなければならない変更です。
2つ目は、変更の日から10日以内に、認定再生医療等委員会へ通知し、再生医療等提供計画事項軽微変更届書を提出する軽微な変更です。
つまり、すべての変更が同じ手続きになるわけではありません。
実務上重要なのは、「その変更が再生医療等の安全性に影響を与えるかどうか」です。
安全性に影響を与える変更であれば、原則として事前に委員会の意見を聴き、変更届を提出する必要があります。
一方、安全性に影響を与えない変更であっても、軽微変更届として10日以内の届出が必要になります。
「小さな変更だから何もしなくてよい」と考えるのは危険です。
2. 事前の変更届が必要になりやすいケース
厚生労働省は、あらかじめ提出が必要な変更事項として、再生医療等の安全性に影響を与える提供方法の変更、特定細胞加工物等の製造・品質管理方法の変更、医薬品または再生医療等製品を承認内容に従わず用いる変更、その他安全性に影響を与えるものを挙げています。
実務上、次のような変更は、事前の変更届が必要になります。
・対象疾患を追加する
・投与部位を追加する
・投与方法を変更する
・投与細胞数や投与量を変更する
・投与回数や投与間隔を変更する
・再投与の基準を変更する
・再生医療等を行う医師を追加する。
・CPCを変更する
・製造工程を変更する
・品質管理試験の内容を変更する
・出荷基準を変更する
・凍結保存や輸送方法を変更する
・患者の選択基準、除外基準を変更する
・安全性評価やフォローアップ方法を変更する
たとえば、変形性膝関節症に対するPRP療法として計画を提出していた医療機関が、肩関節や股関節にも対象を広げる場合、単なる表記修正とはいえません。
対象疾患や投与部位が変われば、科学的妥当性、安全性、評価指標、患者説明も変わる可能性があります。
また、脂肪由来幹細胞治療で、投与細胞数を増やす、投与回数を増やす、静脈投与を追加する、製造工程や品質管理項目を変更するような場合も、慎重な判断が必要です。
3. 軽微変更届が必要になりやすいケース
軽微変更は、安全性に影響を与える変更ではないものの、提供計画の記載内容に変更が生じる場合に必要となる手続きです。
厚生労働省は、軽微な変更事項について、変更の日から10日以内に、認定再生医療等委員会へ通知するとともに、再生医療等提供計画事項軽微変更届書を厚生労働大臣に届け出る必要があるとしています。
実務上、次のような変更では、軽微変更届の要否を確認する必要があります。
・医療機関の住所表記の変更
・電話番号、メールアドレス等の変更
・管理者名の変更
・法人名や部署名の変更
・担当者連絡先の変更
4. 変更届には委員会の意見書などが必要になる
事前の変更届を提出する場合には、認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで手続きを行います。
再生医療等提供計画に変更がある場合は、様式第2「再生医療等提供計画事項変更届書」を提出し、提出時には認定再生医療等委員会の意見書と審査の過程が分かる記録を添付し、あらかじめ提出する必要があるとされています。
そのため、変更届が必要な場合の流れは、一般的に次のようになります。
・変更内容を整理する
・提供計画、添付書類、説明同意文書への影響を確認する
・委員会へ変更審査を依頼する
・委員会で審査を受ける
・委員会の意見書を取得する
・様式第2の変更届を作成する
・必要書類を添付して厚生局へ提出する
・受理後、変更後の内容で運用する
この流れを考えると、変更届はすぐに完了する手続きではありません。
委員会の開催日程、資料作成、審査結果への対応、厚生局提出までの時間を見込んで準備する必要があります。
5. 「CPC側の変更」も医療機関側で確認する
脂肪由来幹細胞治療などでは、細胞加工を外部CPCに委託している医療機関が多くあります。
この場合、医療機関側で見落としやすいのが、CPC側の変更です。
たとえば、次のような変更が考えられます。
・培地の変更
・試薬の変更
・培養工程の変更
・継代数の変更
・凍結保存方法の変更
・輸送方法の変更
・無菌試験の方法変更
・マイコプラズマ試験の方法変更
・エンドトキシン試験の方法変更
・出荷基準の変更
・製造施設の変更
・製造記録やトレーサビリティ管理方法の変更
これらはCPC側の技術的事項ではありますが、再生医療等提供計画には、特定細胞加工物等の製造および品質管理方法が記載されています。
そのため、CPC側の変更が提供計画の記載内容や安全性評価に影響する場合には、医療機関側でも変更手続きの要否を確認する必要があります。
「CPCの内部変更だから医療機関には関係ない」と考えるのは危険です。
患者に再生医療等を提供する主体は医療機関であり、投与される特定細胞加工物等の内容を把握し、提供計画との整合性を確認する責任があります。
6. 説明同意文書の変更は慎重に扱う
説明同意文書は、患者が治療を受けるかどうかを判断するための重要な書類です。
そのため、説明同意文書を変更する場合には、単なる形式修正なのか、患者の意思決定に影響する内容変更なのかを確認する必要があります。
特に、次のような変更は慎重に扱うべきです。
・治療内容の変更
・投与量、投与回数、投与間隔の変更
・期待される効果の記載変更
・リスク、副作用、有害事象の記載変更
・代替治療の記載変更
・費用の変更
・キャンセル時の費用負担の変更
・同意撤回時の取扱いの変更
・健康被害補償の内容変更
・個人情報の取扱い変更
・委員会情報の変更
たとえば、治療費を変更した場合、単に価格表を差し替えるだけでよいとは限りません。
費用は患者の意思決定に直結する重要事項です。
また、同意撤回時の費用負担や、採取後・加工後・投与前キャンセル時の取扱いを変更する場合も、患者への説明内容に大きく関係します。
説明同意文書を変更する場合は、変更内容が提供計画、費用表、契約内容、院内運用と一致しているかを確認する必要があります。
7. 実施医師の追加・削除も見落としやすい
医療機関でよくある変更の一つが、実施医師の追加や削除です。
新しい医師が入職した場合、退職した場合、非常勤医師が治療を担当する場合など、実施体制に変更が生じることがあります。
再生医療等では、実施医師が誰であるか、どのような専門性や経験を有しているかが重要です。
特に、第2種再生医療等や侵襲性のある治療では、医師の経験、研修歴、有害事象発生時の対応能力などが審査上重要視されることがあります。
そのため、実施医師の追加・削除がある場合には、次の点を確認する必要があります。
・提供計画の実施医師欄を変更する必要があるか
・医師略歴書の追加が必要か
・教育研修記録が必要か
・説明同意文書の医師名記載に影響するか
・院内の緊急時対応体制に影響するか
・委員会への報告または審査が必要か
医師の変更は、単なる人事異動ではなく、再生医療等の提供体制に関わる変更です。
実際に治療を担当する前に、必要な手続きが済んでいるか確認することが重要です。
8. 変更を行う前に「計画との差分」を確認する
変更届・軽微変更届で重要なのは、変更内容そのものだけでなく、現在提出している提供計画との差分を確認することです。
たとえば、院内では「少し運用を変えただけ」と認識していても、提供計画では具体的に投与量、投与回数、評価時期、説明内容、製造方法が記載されている場合があります。
この場合、実際の運用が提供計画から外れてしまう可能性があります。
変更前には、次の書類を確認することが重要です。
・再生医療等提供計画
・説明同意文書
・同意書
・費用表
・医師略歴書
・特定細胞加工物等標準書
・製造管理基準書
・品質管理基準書
・衛生管理基準書
・CPCとの契約書
・患者管理表、症例一覧
・委員会審査時の指摘事項、回答書
変更内容がこれらの書類のどこに影響するのかを確認することで、必要な手続きの見落としを防ぐことができます。
9. e-再生医療で提出する様式を確認する
研究以外で再生医療等を行う場合、各種申請書類は「e-再生医療」から提出することとされています。提出済みの提供計画に対する変更等を行う場合も、様式にしたがって各変更届を提出し、計画番号によるログインが必要とされています。
e-再生医療では、その他の提出様式として、再生医療等提供計画事項変更届書、軽微変更届書、中止届書、疾病等報告書、定期報告書、提供終了届書などが示されています。
また、厚生労働省の様式一覧では、様式第2として「再生医療等提供計画事項変更届書」、様式第3として「再生医療等提供計画事項軽微変更届書」、様式第4として「再生医療等提供中止届書」が掲載されています。
実務上は、変更内容に応じて、様式だけでなく、添付書類の差し替えや、委員会意見書、審査過程が分かる記録などが必要になる場合があります。
提出前には、単に様式を作るだけでなく、変更後の提供計画一式として整合しているかを確認することが重要です。
10. 変更管理のルールを院内で決めておく
変更届・軽微変更届の漏れを防ぐためには、院内で変更管理のルールを作ることが重要です。
特に、複数の医師、事務担当者、看護師、CPC、外部業者が関与する再生医療等では、誰かが変更に気づいていても、手続き担当者に共有されていないことがあります。
院内では、次のようなルールを整えておくとよいです。
・再生医療等に関する変更は、実施前に担当者へ共有する
・CPCからの変更通知は必ず保管する
・説明同意文書や費用表を変更する場合は、事前確認を行う
・医師の追加・削除時には、再生医療等提供計画への影響を確認する
・投与量、投与回数、対象疾患を変更する場合は、委員会審査の要否を確認する
・変更内容、変更日、判断結果を記録する
・判断に迷う場合は、委員会または所管厚生局に確認する
再生医療等では、「実際の運用が提供計画と一致していること」が非常に重要です。
変更管理は、法令手続きのためだけでなく、医療機関を守るための内部管理でもあります。
まとめ
再生医療等提供計画の変更では、変更届と軽微変更届の区別を正しく理解することが重要です。
特に注意すべきポイントは、次のとおりです。
・安全性に影響する変更は、原則として事前に委員会の意見を聴き、変更届を提出する
・軽微な変更でも、変更日から10日以内の届出が必要になる
・投与方法、投与量、対象疾患、CPC、製造工程、品質管理方法の変更は慎重に確認する
・説明同意文書や費用表の変更も、患者説明に影響する場合は慎重に扱う
・実施医師の追加・削除も見落としやすい
・CPC側の変更も、提供計画への影響を確認する
・変更前に、提供計画一式との差分を確認する
・院内で変更管理のルールを作る
再生医療等提供計画は、提出して終わりの書類ではありません。
治療開始後も、実際の運用が提供計画と一致しているかを継続的に確認し、変更がある場合には適切な手続きを行う必要があります。
林医療福祉行政書士事務所では、再生医療等提供計画の作成だけでなく、変更届、軽微変更届、定期報告、疾病等報告、委員会対応、CPCとの調整まで、再生医療等の継続的な運用をサポートしています。
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